メリル・ストリープ、男性が牛耳る映画評に立腹
第59回ロンドン映画祭が現地時間7日に開幕し、オープニング作品『サフラジェット(原題) / Suffragette』のメリル・ストリープ、キャリー・マリガン、サラ・ガブロン監督、脚本のアビ・モーガンが会見を行った。本作は約100年前のイギリスで参政権獲得のために闘った女性たちの物語だ。
メリル・ストリープの美しいドレス姿!第59回ロンドン映画祭フォトギャラリー
タイトルとなった「Suffragette」は当時、婦人参政権論者を表すために生まれた言葉で、今となっては知らない人も多い。メリルが「何かSuffering(苦しんでいる)なことと思っている人もいるんじゃないかしら。実際、そうなのだけど」と言うように、映画では苦しみに耐え続けた女性たちが描かれる。構想から完成までに数年が費やされたことについてモーガンは「笑えない、ハードな映画です。ロマンチックではない、ハードな映画です。それが障害となりました」となかなか制作にOKが出なかったことを明かした。
メリルが演じたのは活動の中心となったエメリン・パンクハースト。銅像として残されるほど尊敬を集める人物だが、主役ではなく出番も多くない。そのことを問われると「それはわたしが聞きたかったことだわ」と応じて笑わせたメリル。すかさずモーガンが「あなたには“アイアン・レディ(モーガン脚本の『マーガレット・サッチャー 鉄の女の涙』での主役マーガレット・サッチャー)”をやってもらったじゃないの!」と絶妙の掛け合いを見せた。
キャリーがふんした一労働者を主人公とした理由を、ガブロン監督は「特別な女性の話にはしたくなかった。一般の労働者である女性、現代の世界中の女性とつながる話にしたかったのです」という。それが功を奏した。男性とは比較にならない低賃金で劣悪な環境下、時には性的虐待も受けながら働かされる女性たちの姿から始まる本作は、その状況を変えようとする主人公の側に、観る者を自然に引き込む。
キャリーは「この映画は彼女たちが成し遂げたことだけでなく、今わたしたちの居る社会にスポットを当てます。わたしたちはいまだに性差別のある社会に生きていて、それは歴史となって受け継がれてきたものです」とコメントした。
メリルは映画評が興行成績に与える影響に言及した後、中でも大手の Rotten Tomatoes(認可された人のみが参加できる映画採点サイト)について「(批評家の人数は)男性が760人、女性が168人です」と、さらに「ニューヨーク映画評論家サークルには37人の男性が居て、女性は2人です」と続け、「男性と女性の嗜好(しこう)は同じではありません。腹立たしいです」と訴えた。(取材・文:山口ゆかり / Yukari Yamaguchi)
第59回ロンドン映画祭は現地時間18日まで開催