名匠リドリー・スコットがアカデミー賞候補『オデッセイ』を語る
映画『プロメテウス』のリドリー・スコット監督が、話題作『オデッセイ』(2月5日~日本公開)について語った。
本作は、宇宙飛行士のマーク(マット・デイモン)が火星探査中に嵐に巻き込まれ、他の乗組員から死亡したとみなされて火星に置き去りにされることから物語が展開する。生存していたマークは、空気も水も通信手段もなく、わずかな食料で生き延びようと奮闘し、一方NASAは世界中から科学者を結集してマークの救出劇を敢行する。共演はジェシカ・チャステイン、クリステン・ウィグ、ジェフ・ダニエルズなど。
今作はかなりの時間をかけて製作したが、撮影は短めの72日間で行ったそうだ。「それが可能だったのは、優れたチーム(スタッフと俳優)に囲まれていたからだ。彼らのようなチームと組めたのは長年の経験によるものだが、素晴らしいのは、彼らは僕の刑罰(ハードワーク)を求めていることだ(笑)。さらにキャストは、マット以外は大役ではなく、あくまでアンサンブルキャストだが、そのキャスト個人個人が見事な演技を披露してくれた。そんな演技が披露できたのも脚本のおかげだ」と感謝した。
ショットの構成について「俳優には、どのようなショットを撮るかは事前に伝えていない。実はライブのテレビ番組の際に、ショットの構成をある俳優に伝えたら、露骨にあきれ顔で目をぐるりとされたので、それ以来伝えていない」と語り、一方セットでのマットについて「500人ものスタッフが彼のためにコーヒーを用意しているよ(笑)。彼にとって唯一嫌なやつは、トランシーバーの反対側で2ショットと指示しているやつ(リドリー)だけだろう(笑)! それに彼だけが、宇宙服を着て汗だくになっているが、セットの気温が10度前後だったため、唯一彼が暖かかったわけだし、たぶん大丈夫だ(笑)。でも、彼の撮影は必ず4テイク以内に収め、そのほとんどは最初のテイクか2テイク目を使った」と明かした。
多くの秀作を手掛けてきたリドリーだが、好きな監督は「スタンリー・キューブリック、黒澤明、イングマール・ベルイマンなどに影響を受けた。後に社会派の映画に感化されるが、僕自身は映画監督になったのは40歳からで、40歳前にすでにメガホンを取っていた監督に憧れた。オーソン・ウェルズは全て(脚本、編集、撮影など)においてマスターだった。彼らが手掛けた作品の詳細さが、僕がこれらの監督を好む要因だった」と答えた。(取材・文・細木信宏/Nobuhiro Hosoki)