たけし、12年ぶり主演映画をばっさり「時代のニーズに応えていない」
お笑いタレントで俳優のビートたけしが16日、都内で行われた映画『女が眠る時』の完成会見・特別試写会に出席し、『血と骨』以来12年ぶりに自作以外で主演した本作について、「時代のニーズに応えていない」とぶった切った。
香港出身のウェイン・ワン監督による本作は、女への執着が狂気へと変わる男の姿を、背徳的で官能的な映像美で描くサスペンス。作家の健二(西島秀俊)は、リゾートホテルで出会った初老の佐原(たけし)と美少女の美樹(忽那汐里)のカップルに魅了され、二人をのぞき見するように。やがて健二の行為は常軌を逸し、衝撃の結末を迎える。イベントには西島、忽那、新井浩文も出席した。
本作の感想を求められたたけしは、「時代のニーズに応えていない」とばっさり。しかし、それは褒め言葉で「『007』や『スター・ウォーズ』とか、ディズニーランドに行くような映画が製作されている昨今、直木賞や芥川賞に匹敵するような知的映画」と絶賛。「映画の良き時代の要素を多分に含んでいて、お客の教養や境遇、今までの実体験などが、映画を解釈することに反映すると思います」と説明した。
また、自身の作品において、「初期の作品ではかなり力を入れて、今までの映画をぶち破る意識で作っていたけど、あまりにも観客動員数が少なくて、つい暴力映画やお笑い映画に走って損失を取り戻していた」と苦笑い。ところが、「今回は人の映画ですから、損失を出しても俺のせいじゃない」と適当な発言で笑わせながらも、「自分の理想とする映画なんで、喜んで出させていただいた」と満足そうな表情を見せた。
この日は、本作が世界三大映画祭である第66回ベルリン国際映画祭のパノラマ部門に正式出品されることも伝えられた。たけしは「三大映画祭がいつのまにか五大、六大、東京国際映画祭まで七大映画祭(の一つと言われ)、象印賞みたいに増えてきましたけど、国際映画祭はカンヌ・ベネチア・ベルリンでいいと思っています」と皮肉を交えながら自身の見解を述べると、「厳しい評価もあると思いますが、こういう映画も見直してほしいということで、参加できることは良かったと思います」とうれしそう。
さらに、これまでに何度も国際映画祭に出席したことで知名度が上がり、ハリウッドスターのハーヴェイ・カイテルやジュード・ロウから手紙などをもらうようになったことを明かすと、「俺もまんざらでもないなと思った」と誇らしげに笑った。(取材・文:鶴見菜美子)
映画『女が眠る時』は2月27日より全国公開