行政からの圧力で釜山映画祭執行委員長を詐欺容疑で起訴!映画界では「I Support BIFF」広がる
韓国釜山広域市はこのほど、釜山国際映画祭(BIFF)の会計に不正があったとしてイ・ヨングァン映画祭執行委員長を詐欺で起訴した。2014年の釜山国際映画祭で、セウォル号沈没事故の政府の対応を問題視したドキュメンタリー『ダイビング・ベル(原題)』を釜山市長の中止要請を無視して上映して以降、市を含め政府機関から釜山国際映画祭への圧力が続いているが、遂に実力行使に出た。これを受けて国内外の映画界から釜山国際映画祭を支援する声が広がっている。(取材・文:中山治美)
告訴の理由は、2015年に映画祭の会計監査を行ったところ、スポンサーとの仲介者に対して手数料を支払ったとされる書類に不備があったとの指摘。ただしイ氏が責任をとって退陣すれば、起訴を取り下げる方向だという。
このスポンサーは、上映強行の報復措置で、政府関連機関であるKOFIC(韓国映画振興委員会)からの助成額が大幅減額された昨年、支援を名乗り出た企業や個人だ。直接交渉が無理と判断した釜山市は、外堀から確実にイ氏を退陣に追い込んでいく戦法のようだ。
報道を受けて、映画祭への政治介入を危惧する映画界では「I Support BIFF」と題した支援キャンペーンが立ち上がった。日本からも黒沢清、是枝裕和、阪本順治、想田和弘、塚本晋也、西川美和、廣木隆一、行定勲ら釜山国際映画祭ゆかりの監督や、東京国際映画祭、ぴあフィルムフェスティバル、東京フィルメックスといった各映画祭も名乗りを上げた。
1月6日には釜山で、1月8日にはソウルで釜山国際映画祭支援募金パーティーが開催され、ソウル会場では約600人が参加。そこで是枝監督からの「あなたたちの映画への愛とその自由を守る闘いに心からの尊敬と連帯を!」や、黒沢監督の「世界映画の自由を守る場所。それがプサンです。これからも、ずっと続けて下さい」というビデオメッセージも流され、韓国の映画人を勇気付けたという。
イ氏は昨年11月にシネマトゥディのインタビューに答え、行政からの圧力に屈せず正々堂々と戦っていくことを宣言した。イ氏は今年2月に任期が迫っているが、それまでに弁護士と話し合い、今後の対応を決めるという。