『アンブロークン』は本当に反日映画なのか?公開難航に現役監督が苦言!
第2次世界大戦下における旧日本軍の描写がさまざまな憶測を呼び、物議を醸したアンジェリーナ・ジョリー監督最新作『不屈の男 アンブロークン』の日本公開が迫る中、21日、日本大学芸術学部にて試写会付トークイベントが行われ、『A2』『311』などで知られるドキュメンタリー映画監督の森達也とジャーナリスト・早稲田大学教授の野中章弘が登壇。同大学で映画を学ぶ学生と共に「反日映画とは何なのか」を熱く語った。
本作は、ローラ・ヒレンブランドの実話に基づくベストセラー小説をアンジーがメガホンを取って映画化した戦争ドラマ。陸上競技のオリンピック選手から空軍パイロットとなった主人公・ルイス・ザンペリーニが、47日間の漂流や日本軍の捕虜収容所での虐待に耐えながら生き抜く姿を活写する。
「ハリウッド映画として普通に面白かった」と素直な感想を語った森監督は、日本公開がなかなか実現できなかった経緯について、「この映画がなぜ反日だと決めつけられたのか、それによってなぜ公開に気後れが生じてしまったのか、逆に劇場関係者に聞きたい」と頭をひねる。一方の野中は、「表現物だから反応するところがみんな違う。『人間の尊厳』という部分に反応する人もいれば、『捕虜の虐待』という部分に反応する人もいる。大概は感情的に『反日』と決めつけてしまう場合が多いが、映画の捉え方は人それぞれ」と追随する。
ドキュメンタリー映画『靖国 YASUKUNI』やイルカ追い込み漁を描いた『ザ・コーヴ』でも同様の波紋を呼んだが、これについて森監督は、「これら3作品全てに共通して言えることですが、公開前、誰も観ていない段階で『これは反日だ』と劇場側に圧力をかける、もしくは劇場側が自主規制する、という状況が続いていることが問題」と指摘。さらに、「表現の自由という文脈で言えば、『こんな映画、観る価値ない』とか『上映すべきではない』と訴えるのは自由。でも、最低限のたしなみとして、映画を観てから主張すべきでしょう」と苦言を呈する。
また、「反日映画の定義をちゃんと考えるべき」と強調する森監督は、「日本の何に対して『反』と唱えるのか。システムなのか、国益なのか、国の在り方なのか、イメージなのか。今、一つ言えることは、『靖国 YASUKUNI』は中国人監督、『ザ・コーヴ』と今回の映画はアメリカ人。ということは、外国人が日本について批判する映画を撮ったら、『反日映画』だと……これはとても浅い、そのレベルですよ!」と語気を強める。
続けざまに「去年、北朝鮮の金正恩を暗殺するという映画『ザ・インタビュー』の上映延期が決まったときにオバマ大統領が公式に『公開すべきだ!』と言いましたね。逆に北朝鮮がオバマを暗殺する映画を撮っても、アメリカは上映するでしょう。そういった意味でも、アメリカは短絡的な判断はしない」と語り、日本の現状を嘆いた。(取材・文:坂田正樹)
『不屈の男 アンブロークン』は2月6日よりシアター・イメージフォーラムほか全国順次公開