宇宙飛行士・野口聡一さんが宇宙で一番恋しかったものとは?
火星を舞台にした映画『オデッセイ』の特別試写会が2日、米国大使公邸にて行われ、野口聡一氏(JAXA宇宙飛行士)、山崎直子氏(元宇宙飛行士)、クリス・キャシディ氏(NASAチーフ宇宙飛行士)、マイケル・E・フォッサム氏(NASA宇宙飛行士)、そして米国大使館を代表してキャロライン・ケネディ駐日米国大使が出席し、参加した45名の高校生・大学生からのさまざまな質問に答えた。
同作はリドリー・スコット監督、マット・デイモン主演で、火星に取り残された宇宙飛行士のサバイバルと、彼を救おうとする仲間たちのミッションを描いたSFアドベンチャー。上映後には約1時間にわたって質疑応答が行われた。
映画にちなんで困難の中でも冷静さを保つ秘けつには、野口氏が「大事な事は二つある」と指摘。「一つは自分の能力を信じて常に冷静に。焦りや気持ちのダウンで、できる事ができなくなってしまうのは避けたい。受験や部活でも落ち着いて自分を信じて、今できる事をやっていく事です。もう一つは、仲間と共に頑張る事。この映画は主人公もすごいけど、それを支えている仲間の力もすごい」とアドバイス。
訓練中辛かったエピソードでは、山崎氏がロシアでの壮絶なサバイバル訓練を紹介。「不時着した事を想定してマイナス20度くらいの雪の上で3日間キャンプをします。また、海で遭難した事を考えてヘリコプターで救助され、さらにそのヘリが墜落した事を想定した訓練もします」と肉体的極限に近いケースを想定したものだという。続けて「訓練中にゴールが見えず不安になることがあります。1年後か2年後か、いつ宇宙に行けるかわからない時、自分自身でモチベーションを保って、いつか行けると信じてやることがチャレンジングであり楽しい点かもしれません」と精神面の苦労も語った。
一方、宇宙に行った事で変化した価値観については、クリス氏が「宇宙に行く前は考えていなかったけど、宇宙から青い地球を見て70億人が住んでいるところだと思うとこの舟を守らないといけないと思いました」と感傷的に振り返った。
また、「宇宙に滞在中一番恋しかったものは?」という質問も。これには「ラーメンです」(野口)、「海や草や地球の臭いです」(クリス)、「わたしはシャワーとお風呂です。映画にもあるように、ただ体を拭くだけでシャワーは何年も浴びられないので」(山崎)、「家族です。宇宙に行く3週間前に孫娘が産まれたばかりで、写真を持っていきました」(マイケル)と人間味あふれる回答が飛び出していた。(取材・文:中村好伸)
映画『オデッセイ』は2月5日公開