『マッドマックス』のV6、レオ初受賞 SNSが沸き立ったアカデミー賞
第88回アカデミー賞
映画『マッドマックス 怒りのデス・ロード』が最多6部門を受賞し、レオナルド・ディカプリオが『レヴェナント:蘇えりし者』で初のオスカーを獲得した第88回アカデミー賞授賞式は、米ドルビー・シアターで授賞式に参加したセレブたちだけではなく、世界中の人々もSNSなどを通して熱狂させた。もちろん日本も例外ではなかった。
アカデミー賞といえば、スクリーンを彩るセレブたちが一堂に集まるという意味でも注目度が高いイベントだ。それゆえに、美術賞や衣装デザイン賞などの技術部門よりも、主演男優・女優賞や助演男優・女優賞、監督賞、作品賞などの認知度の高い人々が登場する部門の方が話題にされがちな面がある。しかし、今年はその状況を『マッドマックス』が打破した。
『マッドマックス』は、ジョージ・ミラー監督自身が「カーチェイスをしているだけのシュールな作品なのに」(国際映画批評家連盟賞での受賞時スピーチ)と語るように、とてもシンプルなストーリー展開だ。主人公が悪の親玉に捕えられて、逃げて、親玉に反旗を翻す女性たちと協力することになり、逃げることをやめて親玉に戦いを挑む。観客を圧倒する「刺激」はあるものの、アカデミー会員に好まれるような重厚なドラマ路線だとはいいがたい。その『マッドマックス』が、衣装デザイン賞、美術賞、メイク・ヘアスタイリング賞をまさかの3連続で受賞。技術賞だがアカデミー会員からの評価を受けた。
すると同作劇中の、砂漠の支配者イモータン・ジョーを、崇拝の象徴とするV型8気筒エンジンにちなんでたたえる「V8」サインにちなみ、「アカデミー賞でも8部門受賞という『V8』を飾ることができるのでは」という期待がファンの間で高まり始める。また同3部門が、アカデミー賞が始まってすぐに発表された5部門のうちの3部門だったということも功を奏し、自然とその後の技術賞も注目を浴びるようになった。
また『マッドマックス』が6部門を制覇したころには、短編ドキュメンタリー賞プレゼンターのルイス・C・Kが、「オスカーは『マッドマックス』……ではありません」とジョークを言うほど現地の会場もアツくなっていた。この熱はアカデミー賞で注目されていたほかの作品との相乗効果を生み、「マッドマックス」「視覚効果賞」「助演女優賞」「撮影賞」と賞の名前もTwitterのトレンドに上がっていく。
そして最後にSNSで盛り上がる火をつけたのは、やはりレオだ。日本で『タイタニック』フィーバーを巻き起こし誰もが知る彼が念願の受賞を果たし、祝福の言葉でTwitterはあふれかえった。授賞式が終了して4時間が経過した18時時点でも「ディカプリオ」「レオ様」、そして「マッドマックス」「Oscars」のワードがトレンド入りを果たし、映画ファンの興奮は冷める気配を見せない。
最近のアカデミー賞で話題になったことを思い返すと、『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』のパロディーでパンツ一丁のままステージに登場したニール・パトリック・ハリス(第87回司会者)や、会場にピザ屋を呼びその場で集合写真をTwitterに投稿したエレン・デジェネレス(第86回司会者)といった、司会者が授賞式中に行ったSNSで騒ぎ立てられるようなサプライズ的な行動やセレブのセクシーなドレスの話題が目立つ。しかし今回何よりも注目を浴びたのは、作品や俳優自身。映画作品や俳優、製作陣をたたえる正統な盛り上がりだったともいえるのではないだろうか。(編集部・井本早紀)
第88回アカデミー賞授賞式は29日午前9時よりWOWOWプライムで生中継(よる9時よりリピート放送)