メリル・ストリープの美しき娘、母との関係を明かす
メリル・ストリープが、ロックミュージシャンを演じ、その娘を実の娘メイミー・ガマーが演じた映画『幸せをつかむ歌』のプロモーションで、メイミーがメキシコ、カンクンで母、メリル・ストリープとの関係や自らのキャリアについて語った。(編集部:下村麻美)
待ち望んでいた母との共演
『幸せをつかむ歌』に登場するメイミーは、夫に浮気され離婚し、なりふり構わず悲しんでいる女性という役どころのため、初登場シーンは、髪はボサボサでノーメイク……お世辞にも美しいとはいえない。しかし、実物のメイミーは、スマートでスタイルがよく、目、鼻はメリルのDNAを受け継ぎ、輝くような金髪と肌も透き通るような美しさで、なによりも気品がある。女優としてはクレア・デインズ主演の『いつか眠りにつく前に』の演技が印象的だが、母メリルと『心みだれて』(1986)でも3歳のときに共演している。時を経て29年、メイミーは母との共演の時を待っていたという。
「いつかその日が来るだろうと、ずっと思っていたのかもしれないわね。この脚本が来たときには、突然のことで母も私も驚いたけど、私たちが語ることのできるストーリー、語りたいと思うストーリーであることは、はっきりしていたわ。ちょうど母のスケジュールも空いていたし、すべての条件が整っていたのよ」
確かに、メイミーにとってもメリルにとってもこの作品は29年ぶりに共演する意味のある作品だった。本当の母と娘でなければ出せない微妙な空気、そして距離感がリアルで、二人の感情が手にとるように伝わってくる。
仲のいい母娘が役づくりのため離ればなれ
実際には仲のいいメリルとメイミーだが、『幸せをつかむ歌』では、ロックシンガーになるため家族を捨てて飛び出した母と、そのことが確執になっている娘という役どころ。『羊たちの沈黙』『フィラデルフィア』などディープな人間ドラマを描くことで定評のあるジョナサン・デミ監督は、撮影中に二人を引き離し、役づくりをさせたというが、撮影が終わった帰り道はメイミーとメリルは仲よく一緒に帰ったという。さすがにそこまではジョナサンも立ち入れなかったらしい。
そんな育ちのいいメイミーは、確かにサラブレットとして気品があり、野心のかけらもないように見えるが、実は女優として意欲的で監督業にも興味があるという。
「ずっと演じ続けていたいわ。使ってもらえる限りね。そして常に冷静でいたい。あとは、電話を待っている立場ではなく、自分からいろいろな人に声を掛けて、仕事を広げられたらうれしいわ。製作や企画、監督もやってみたいわ」
母がメリル・ストリープなのはパワー
ノースウェスト大学を卒業し、オーディションを受け、オフ・ブロードウェイで地道に女優のキャリアを積み上げてきたメイミー。メリル・ストリープという大女優を母に持ちながら同じ女優業をキャリアに選んだのは、かなりハートが強い。このようなインタビューを受けると必ず母親について聞かれることに、嫌悪を覚えるどころかメイミーはそれをパワーにしている。
「私は幸運よ。(有名な母をもったことが)私に与えられたこと。人は皆それぞれ何かを与えられているでしょう」
そうあっけらかんと言ってのけるメイミーの芯の強さと根っからの明るさに、大女優への可能性を垣間見る思いがした。
『幸せをつかむ歌』は、3人の子供の母親でありながら、ロックミュージシャンという道を選んだ母親、夫に捨てられ人生に道を見いだせない娘、そしてゲイの息子と結婚を控えた息子、そして大金持ちの元夫が織りなす人間模様がじわじわと心に響いてくる。どんな状況でも自分の好きなように生きれば人は幸せ、そんなメッセージが伝わってくる人間賛歌だ。
映画『幸せをつかむ歌』は3月5日Bunkamuraル・シネマ、ヒューマントラストシネマ有楽町ほかで公開