イーサン・ホークが語る伝説のジャズ・トランペット奏者チェット・ベイカーとは?
演技派俳優イーサン・ホークが、新作『ボーン・トゥ・ビー・ブルー(原題)/ Born to Be Blue』について、3月25日(現地時間)にニューヨークで行われたAOLのイベントで語った。
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本作は、名ジャズ・トランペット奏者として一世を風靡(ふうび)したチェット・ベイカー(イーサン)がドラッグに依存し、ある日暴行されて歯を失い演奏できなくなったことからどん底に落ちるものの、そこから徐々に再生していく姿を描いている。映画『サバイバル・デッド・アイランド』の製作者ロバート・バドローが脚本兼監督を務めた。
なぜチェットが苦悩した時代を演じたのか。「自分が要求したことを全て手に入れ、全てうまくいった人を描いたら、(これまでのミュージシャンを描いた作品と)代わり映えがしない。もちろん、そこには良い音楽はあるだろうが、ストーリーとしては、真っすぐだった道を見失ったチェットの中年時代の方が面白い。映画内では、才能があることが当たり前で、人生を楽しんでいたチェットが、すべてを失うことになる。そこで、なぜ自分が生きているか考えるんだ。俳優として、そんなチェットの当時の内面に入り込めることに興奮したよ」と語った。
子供の頃ジャズの影響を受けたのか。「僕の母親が3枚のジャズアルバムを持っていて、それらはマイルス・デイヴィスの『Kind of Blue』、『Birth of the Cool』、『Blue Moods』だった。子供にとってジャズは、別の部屋にいる大人の会話を聞くようなもので、当時の僕は(ジャズを)よくわかっていなかったが、敬意を表すべき価値あるものと思っていた。そして高校卒業後に、ブルース・ウェバーが監督した『レッツ・ゲット・ロスト』や、『セロニアス・モンク/ストレート・ノー・チェイサー』、そしてフォレスト・ウィテカーが主演した『バード』を鑑賞し、これらの作品群に投影されたジャズの時代に誘惑された」といつの間にかハマっていったことを語った。
チェットの人生のどこに興味を持ったのか。「彼の周りに、ジャズ界の伝説の人々がいたことや、不遇の時代にガソリンスタンドで給油をしていたことだ。ジャズの英雄が、中年時代に給油していたなんて、想像できないだろ! さらに彼は建築業でも働いていた。彼は、どんなことをしてでも、生き残っていたかったんだ。個人的にそんな彼に感動したよ」と心を動かされたようだ。 (取材・文・細木信宏/Nobuhiro Hosoki)