世界的なDJスティーヴ・アオキと「Benihana」創業者で父親のロッキー青木さんとの関係を描いた映画とは? トライベッカ映画祭
第15回トライベッカ映画祭(Tribeca Film Festival 2016)に出品された『アイル・スリープ・ホウェン・アイム・デッド(原題) / I'll Sleep When I'm Dead』について、DJのスティーヴ・アオキとジャスティン・クルック監督が、15日(現地時間)にニューヨークで行われたAOLのイベントで語った。
本作は、米国で鉄板焼きレストランチェーン店「Benihana」を成功させたロッキー青木さんの息子スティーヴ・アオキが、父親の助力をまったく得ずに世界的なDJになっていく姿と、疎遠だった父親との関係を修復していく過程が描かれたドキュメンタリー作品。
製作経緯について、「まず僕のパートナー、デヴィッド・ゲルブがスティーヴと会った。そこで、僕はEDM(エレクトロニック・ダンス・ミュージック)の映画製作を企画したが、EDMのジャンルを超越したもので、さらにダンス・ミュージックのファンも楽しめる映画を描きたいと思った。そして実際、スティーヴに会うと、彼の家族の背景が興味深かった。デヴィッドの監督作『二郎は鮨の夢を見る』でも父親と息子の関係が描かれていたことから、そんな親子関係を描いたらと思ったのがきっかけだった」とジャスティンは答えた。
ロッキー青木との関係について、スティーヴは「父のするクレイジーな体験(ボートレースなど)に付き合わされ、僕自身はしっかり目を開けながらそれを学んでいた感じだ。第二次世界大戦からそれほど月日がたっていなくて、日本人がまだネガティブなイメージだった頃に、彼はハーレムでアイスクリーム屋を開いた。そしてその後、彼が父親や兄弟と共に、若者が抱くようなユニークなアイデア(鉄板焼きでのシェフのパフォーマンス)を通して、特定の客のニーズを満足させたやり方は、アーカイブの映像を観ても興奮したよ」と語った。
年間300日ものライブをこなす原動力は父親に似ている。「父は愛情を込めて子供たちを抱きしめるようなタイプではなかった。それは伝統的な日本のタフな愛の形だった。DJをする前に自ら設立したレコードレーベルでは借金をしたが、父にその話をすることは考えもしなかった。もちろん、父も僕が困難な状況にあることはわかっていたはずだ。結局、僕はバーなどで働きながらDJで稼ぎ、そのおかげでレコードレーベル会社のスタジオ内の機器の設備を向上させ、チームも構成できた」と振り返った。(取材・文・細木信宏/Nobuhiro Hosoki)