伝説のサッカー選手ペレに聞く、自身の伝記映画とは? トライベッカ映画祭
今年のトライベッカ映画祭で上映された話題作『ペレ 伝説の誕生』(7月8日日本公開)について、伝説のサッカー選手ペレが、4月22日(現地時間)にニューヨークのリージェンシー・ホテルで行われた記者会見で語った。
本作は、ペレがブラジルのスラム街で送った幼少期から17歳でブラジル初のワールドカップ優勝の栄冠を手にするまでを追ったもの。2人の新星レオナルド・リマ・カヴァーリョとケヴィン・ヂ・パウラが9歳と17歳のペレを演じ、監督は『ザ・トゥー・エスコバルズ(原題) / The Two Escobers』のジェフ・ジンバリストとマイケル・ジンバリストが務めた。
2人の俳優レオナルドとケヴィンについては、「彼らの演技はまぁまぁで、僕の若い頃はもっとハンサムだった(ジョーク)。彼らの演技には驚かされたよ! 彼らのような少年が、僕の若い頃を演じるのは容易ではなかったはずだ」と努力を評価していた。一方、ペレの父親ドンジーニョにふんしたミュージシャンのセウ・ジョルジに関して尋ねてみると、「僕はセウに、『ミュージシャンとして成功しているのに、なぜ僕の父親を演じたの?』と聞いたことがあった。すると彼は『子供の頃にサッカー選手になりたかった』と答えてきたので、僕は『実は子供の頃の夢はミュージシャンだったが、サッカー選手になってしまった』と教えてあげたよ」と意外な言葉が返ってきた。
今作はペレが9歳だった頃から描かれるが、ペレは当時を振り返り「この年に、地元ブラジルでFIFAワールドカップが行われたんだ。当時、僕の父親はブラジル代表ではなかったが、サンパウロのバウルで選手としてプレーしたこともあった。あの頃はまだTVがなかったため、父親は大勢の友人と共にラジオで実況を聞いていた。ところが、ブラジルが負けて(マラカナンの悲劇)、僕もどうして良いかわからなかったから、父親に『悲しまないで、いつか僕がブラジルをワールドカップで優勝させてあげるから』と答えたんだ」と明かし、「幸いにも、神は3度も僕にそのチャンスを与えてくれた」と語った。
今作を通してペレは何を伝えたいのか。「僕の3度のワールドカップ優勝や1,281ゴール(通算1,281得点)などではなく、若い世代に困難な環境の中で、どう振る舞い、どう望んだ場所に到達するかを伝えたかった。映画内でも(選手としての)健康や食事、さらに立派な大人になるためにドラッグを避けることにも触れていて、それらが僕のキャリアよりも重要だ」と述べていた。(取材・文・細木信宏/Nobuhiro Hosoki)