ドナルドダックはなぜパンツなし?パンツ問題を克服した『ズートピア』
ディズニー・アニメーション最新作『ズートピア』では、服を着て、高度な文明社会をエンジョイする動物たちの姿が描かれている。そう、シャツやパンツもちゃんと着こなしている動物たちであふれているのだ。ドナルドダックや『ロビン・フッド』(1973)など、パンツをはいていないキャラクターが多かったディズニー・アニメーションにおいては、かなり革命的なことだ。
本作に登場する動物たちは、2本足で歩く。そのため、下手に作ってしまうと動物のコスプレをしているような人間になってしまう可能性があった。動物らしさ・人間らしさをどこまで取り入れるか。スタッフたちはこの問題を解決するために『ジャングル・ブック』『ロビン・フッド』『ダンボ』など、これまでにディズニーが動物を擬人化した作品を見直し、人間っぽい特徴をそれぞれどのようにどこまで持たせているのか研究したそう。だが、本作の監督バイロン・ハワードはこれで満足することはなかった。動物にパンツをはかせるということへの挑戦を開始したのだ。
『ズートピア』のキャラクター部門を担当したデイヴ・コモロフスキは当時のことを、「どういうことを意味しているかって? それはこれらのパンツを、すべてのさまざまなスタイルの足のためにデザインするということだよ」と振り返る。そして彼はこの作業を通して、なぜドナルドダックたちがパンツをはいていないのかという疑問に対して、ある答えを得た。「なぜディズニーがパンツを避ける傾向にあるのかわかったよ。とても難しいからなんだ」。
動物の足は、カバのようにほとんど足がなかったり、ネズミのように短くて小さかったり、キリンのように長くて細かったりとさまざまなタイプが存在し、構造もそれぞれの動物ごとに異なる。またパンツをデザインする際には、それぞれの胴の長さも考慮しなければ人間が動物の頭をかぶっているような奇妙なデザインになってしまう。それらを全てクリアしつつ、新たな服をデザインするという仕事はかなりの時間を要したそう。だが、本作でスタッフたちはやり遂げた。さらに1匹1匹が独自の動物のように見えるように、全く物語に絡んでこないネズミであってもかなりのパターンの服装を用意したという。『ズートピア』のスタッフは、パンツ問題を時間と労力で見事に解決している。(編集部・井本早紀)
映画『ズートピア』は公開中