佐藤浩市が放った言葉は“宣戦布告”か、若手へのエール!?
横山秀夫による骨太なミステリー小説を前後編の2部作で描く映画『64-ロクヨン-前編/後編』で、佐藤浩市の部下を演じた綾野剛と榮倉奈々が、主演の佐藤がいかに若手を鼓舞したかについて語った。
本作は昭和64年に起きた少女誘拐殺人事件を巡る人間ドラマを、県警の広報官を主人公に据えて描き、犯人は誰か? というミステリーで観る者を引き込むエンターテインメント大作。佐藤が記者クラブでのシーンの撮影を前に若手俳優へ「全力でぶつかって来い。俺が全部受け止めてやる」と投げかけた言葉について綾野は、「“宣戦布告”だとか“喝を入れた”と受け取った人もいたようですが、僕からしたら“エール”でした。余計な気を使わなくていいからと逆に自分たちが気を使っていただいた。だからこそ『思いっきりやらなきゃいけない』という想いを強くしたんです」と大先輩の言葉に心が突き動かされたと語る。
榮倉も「宣戦布告とか勝負! のように思われたんですね」と意外な表情。しっくりくる言葉が見つからなかったようで「エールというか、なんだろう……」と思案していると綾野が「『いいもんつくろうぜ!』ってことですよね。『馴れ合いにならないよう、みんなやりきろうね』って」と言葉を継ぎ、榮倉もそれに「うんうん」とうなずく。広報室vs記者クラブという静かに白熱するバトルシーンをつくり上げた共演者同士のチームワークが垣間見えた。
佐藤自身も「あのときは特に記者役に若い役者の方が多かったから。もちろん撮影では台本があってその通りに演じていくけど、お芝居が決まり切った“約束事”になってしまっては面白くない。予定調和にならないために『全力で来い!』ってことです」とその真意を打ち明ける。実際にその言葉に触発された綾野は改めて気合いを入れ直し、「もし1ミリでも作品のためになるならと、現場にずっといたのを覚えています」と明かし、榮倉も刺激に満ちた撮影をじっくりと味わったと振り返った。
主役として堂々と構える揺るぎない存在に全力で立ち向かう若手俳優たち。その“激突”は、映画『64-ロクヨン-』の中で発熱し、三浦友和、永瀬正敏、緒形直人らベテラン俳優たち“VS佐藤浩市”というさらなる“激突”へと昇華されていく。(取材・文/浅見祥子)
映画『64-ロクヨン-前編』は5月7日より、映画『64-ロクヨン-後編』は6月11日より全国公開