あだち充の手法が影響!タイの人気監督が明かす映画作りのこだわり
タイの人気監督ニティワット・タラトーンが10日、都内で行われた映画『すれ違いのダイアリーズ』の舞台あいさつに出席し、「漫画家のあだち充さんの登場人物の描き方が、自分に染み付いているところがある」と自身の作風について明かした。
本作は、電気もなく携帯電話もつながらない山奥の水上小学校を舞台に、新任教師ソーンが、教室で偶然見つけた前任の女性教師エーンの日記に目を通すうち、顔も知らない彼女に恋心を抱くようになるプラトニックなラブストーリー。第88回アカデミー賞外国語映画賞のタイ代表作品にも選ばれ、主人公ソーンをタイのトップスター、スクリット・ウィセートケーオが演じ、首都バンコクだけでも100万人動員の大ヒットを記録した。
二つの実話にインスピレーションを受けたと語るタラトーン監督。一つは、日記を読んで恋をした男性の話で「会ったことのない二人が互いの考えを通じて知り合い、恋をすることができるのだろうかと思ったのが、最初のコンセプト」と言及。二つ目は「水上学校で教えている先生の実話を聞き、水上学校は普通の学校よりすごいところがある、この学校は動くじゃないかと思い、学校ごと生徒をどこかに連れていくシーンがあったら素晴らしいだろうな」と説明した。
さらに、「映画作りのこだわり」についてタラトーン監督は「実は中学の頃からあだち充さんの漫画が好きで。あだちさんは大きなコマに人物の顔だけポーンと置いて、多くを語らず、余白のある描き方をするんですが、読む方には人物の気持ちがとてもよく伝わってくる。自分もそういう手法が好きで、自然にやっている」と語った。続けて「実は試写のとき、後ろの席で皆さんと一緒にこっそり映画を観ていたんです。皆さんが笑ったり、幸せそうな表情をしているのがとてもうれしかった」と告白し、会場を温かい雰囲気に包んでいた。(取材/岸田智)
映画『すれ違いのダイアリーズ』は5月14日よりシネスイッチ銀座、新宿シネマカリテほか全国順次公開