存続の危機経た釜山国際映画祭、今年の開催が決定!「独立性保つ」決意新たに
映画祭の自由と独立性を巡って釜山市と攻防戦を続けていた釜山国際映画祭(BIFF)の一連の問題に終止符が打たれ、このほど、今年の開催が10月6日から15日に決定。BIFF組織委員長を務めていたソ・ビョンス釜山市長が辞任し、代わりに同映画祭創始者で現・名誉執行委員長のキム・ドンホ氏が就任する。カン・スヨン映画祭執行委員長は、映画祭を支援してくれた関係者へ感謝のメールを送ると共に、「映画祭の独立性を保ち運営を進めます」と決意新たに誓った。
2014年10月に開催された第19回釜山国際映画祭で始まったBIFF騒動がようやく収束を迎えた。旅客船セウォル号沈没事故を巡る韓国政府の対応の問題を告発したドキュメンタリー映画『ダイビング・ベル(原題)』は、政府からの指示を受けた釜山市により上映中止が要請された。BIFFがこれを無視したことから、顔を潰された形となったソ・ビョンス釜山市長の怒りが爆発。イ・ヨングァン前執行委員長に退陣を迫り、会計監査に入って不正行為を指摘し、イ前執行委員長を告訴した。
これに対し全世界の映画人が反発。「I support BIFF」と題した支援キャンペーンを展開したほか、全州国際映画祭など韓国の4つの映画祭が共同声明を出して映画祭への政治介入を非難。遂には韓国映画界が一致団結し、韓国映画製作作家協会など9つの団体によって結成された非常対策委員会が、第21回大会のボイコットを宣言する事態となっていた。
今回の組織委員長交代は、BIFFの歴史を途絶えさせない為の妥協案と言えるだろう。イ前執行委員長は任期満了も伴い解職となったが、自分の首と引き換えに映画祭の自主性と独立性を盛り込んだ定款の改正要求を求めていた件は、持ち越しになっている。
また新・組織委員長となったキム氏は映画界からの信頼が厚いとはいえ、今年79歳と高齢で、長期的視点に立った組織改編とは言い難い。何より第20回の開催において、ソ市長とイ前執行委員長が話し合った結果、女優のカン・スヨンを執行委員長に迎えてイ前執行委員長との2人体制にすることで一度は手打ちをしたものの、映画祭が終わるや、監査に入って再びBIFFに圧力をかけたという過去がある。
映画祭の独立性を巡る問題は、BIFFのみに限らない。今月には、6月16日の開幕が迫っている第37回ダーバン国際映画祭(南アフリカ共和国)で、本年度のベルリン国際映画祭パノラマ部門で観客賞を受賞した映画『シェパーズ・アンド・ブッチャーズ(原題)/Shepherds and Butchers』(南アフリカ共和国・アメリカ・ドイツの合作。オリヴァー・シュミッツ監督作)の上映を巡って、主催団体クワズール・ナタール大学センター・フォー・クリエイティブアーツが、映画祭マネージャーとシニア・プログラマーを解任した。
同作は南アフリカ共和国でアパルトヘイト(人種隔離政策)が行われていた1987年に、19歳の白人青年がバスに乗る黒人サッカー選手7人を銃殺した実話がベースとなっている。当初は6月17日に特別上映される予定だった。同映画祭の全プログラム発表は6月1日だが、推薦したスタッフの解任で変更になる可能性が高い。映画祭の独立性を巡る問題は、今後も続きそうだ。(中山治美)