命を散らす「桜花」特攻命じた男の遺言
太平洋戦争末期に海軍が行った特攻戦術で使用された兵器「桜花」の真実に迫るドキュメンタリー映画『人間爆弾「桜花」 -特攻を命じた兵士の遺言-』が8月に公開されることが発表された。戦時中に行われた非情な作戦に参加する隊員を選ぶように命じられた男が、世界に例を見ない有人誘導の爆弾の真実を明らかにする。
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「桜花」は、太平洋戦争末期に大日本帝国海軍が戦局を打開する切り札として断行した特攻戦術に用いられた人間爆弾。自力で飛行するためのエンジンを積まない1人乗りの「桜花」は機首に最大で約1.2トンの爆弾を積み、一式陸上攻撃機という爆撃機によって敵艦の近くまで運ばれる。そしてパイロットを乗せたまま敵艦に向けて投下され、必死の体当たり攻撃を行った。
本作が焦点を当てるのは、海軍大尉として戦争に参加し、23歳の若さで上官から「桜花」の出撃隊員を選ぶように命じられた林冨士夫さん。「おれは育てて、鉛筆の先で殺したんだ」と当時を振り返る林さんは、多くの同志たちを死へ送り出すという究極の不条理と戦い、自分の出撃を待たずして終戦を迎えた。敗戦の混乱と激動の時代の中で林さんは、神雷部隊桜花隊(桜花を使った攻撃を実行した部隊の正式名称)での1年半の記憶を語り継ぐことを自身に課したという。
深田晃司監督作『淵に立つ』、河瀬直美監督作『あん』『2つ目の窓』、黒沢清監督作『岸辺の旅』、今村昌平監督作『カンゾー先生』などをプロデュースした澤田正道がメガホンを取った本作。亡き特攻隊員に語りかける林さんの遺言ともいうべき鎮魂のドキュメンタリーが、戦後71年を迎える日本人の心に刻みこまれる。(編集部・海江田宗)
映画『人間爆弾「桜花」 -特攻を命じた兵士の遺言-』は8月下旬よりシアター・イメージフォーラムほか全国公開