『シン・ゴジラ』市川実日子、予想外だった尾頭ブーム 庵野秀明との役づくり
「エヴァンゲリオン」の庵野秀明が脚本・総監督を務め、累計興行収入53億円を突破する大ヒットを記録中の映画『シン・ゴジラ』で、インターネット上でイラストが大量投稿されるなど、絶大な支持を集める尾頭ヒロミ役の市川実日子が、予期せぬ“尾頭ブーム”について語った。
環境省自然環境局野生生物課長補佐・尾頭ヒロミは、対ゴジラの要となる組織「巨大不明生物特設災害対策本部」(巨災対)の一員として、優れた知識と分析能力を駆使して大きく貢献する人物。無表情で化粧気のない見た目の彼女から、早口で的確な発言が飛び出すアクの強いキャラクター性にノックアウトされる観客が続出している。
今回のフィーバーを「自分ではあまりわかっていないんです」と語る市川だが、それとなくブームは実感している様子。「たくさんの方が映画を観てくださっているのは感じています。この間、道端で学校の先生をしているという方に『『シン・ゴジラ』の変人生物学者の方ですよね』って声をかけていただいて(笑)。一瞬、そっちの肩書もいいかもなんて思ってしまいました。ブームを予想? 誰もしないでしょう! 全くないです(笑)」とはにかむ。
役づくりのベースになったのは、監督・特技監督を務めた樋口真嗣から渡された7枚の付箋紙だった。そこに書いてあった言葉は「探求心」「媚びない」「マイペース」「冷静沈着」「内向的」「真面目」「他者を気にせず」。そこに自身のイメージを重ね、庵野総監督とのディスカッションを経て人物像が出来上がっていった。「庵野さんとは、『CUTIE HONEY キューティーハニー』(2003)でご一緒して以来でした。最初の段階で、とにかくテキパキ、早口でとは言われていましたね。後は何度か現場で思いついたことを庵野さんにお伝えして、『いいね』みたいな反応をいただいたことはありました」。
終始にこやかに思いを語る市川と尾頭の間にはかなりのギャップを感じるが、本人は「違うことで楽な部分もあったかもしれません。本番は尾頭で、それ以外は呑気というか」と笑う。「でも、自分の中には尾頭さんもいるんだと思います。その尾頭さん部分を突きながら、現場の空気を感じて、監督とやり取りをしていました」。
『シン・ゴジラ』については「読み終わったとき、部屋の外にゴジラがいる? と思ってしまうくらい台本にリアリティーがあって。完成した映画を観るのが少し怖かったんですが、観たらゴジラに惹(ひ)かれてしまった。一言じゃ言えないですけど、美しい、きれいな生き物だと感じたんです」という市川。「しかしながら、2回目ではゴジラが災害に見えて、恐怖しかなくて。1回目と2回目でこんなに印象が違うんだなって驚きました」。
この役をきっかけに違う作品のオファーも届いているという市川。ネット上では、尾頭のスピンオフ作品を望む声まで上がっていると尋ねると、「皆さん、本当に観たいですか?」と笑みを浮かべた。(編集部・入倉功一)