マガジンへの持ち込みも!岩井俊二監督の漫画愛に「ウシジマ」作者も驚き
「闇金ウシジマくん」の漫画家・真鍋昌平と岩井俊二監督という異色の組み合わせによるトークショーが8日に代官山蔦屋書店で実施され、一時期漫画家を目指し、出版社に持ち込みまでしたという岩井監督の漫画愛トークに会場が沸いた。
今年3月に公開された『リップヴァンウィンクルの花嫁』のブルーレイ&DVD発売を記念して行われた本トークショー。イベントへの参加は今月2日に発売されたばかりのソフト購入者が対象ということで、会場には熱狂的なファンが数多く来場。その中で劇中の黒木華の役柄の主体性のなさは誰もが抱えうるものであり、人に頼ってしまう弱さは「闇金ウシジマくん」のエピソード「洗脳くん」に通じる部分があるという話が出るなど、二人の話は漫画を絡めたトークに。
二人は脚本家の北川悦吏子のつながりで、個人的に食事をしたことがあるという。「その時は宇宙戦艦ヤマトの話とか、いろいろな話をしてくれた」と振り返る真鍋に、「『闇金ウシジマくん』はここ20年の漫画の中でも最高傑作というくらいの名作」とほれ込んでいる様子を見せる岩井。岩井が「基本はカウカウファイナンスという闇金の話で。一見すると、ヤンキーっぽいテイストだと思われがちですけど、実はものすごくデリケートな人間観察を基に作られる奇跡のような世界があって。一読者として魅了されました」と熱弁すると、真鍋は「サングラスの中で泣いていますよ。号泣ですよ」と感激の表情を見せた。
そんな岩井に今度は真鍋が「岩井監督は本当に漫画が好きですよね」と呼び掛けると、「実は僕は漫画家を目指したことがあって。少年マガジンに持ち込んだことがあった」と意外な事実を明かした岩井。その漫画は「雨の日に小学生の男の子と女の子が留守番しているだけの地味な内容」とのことだが、「月例賞の佳作かなにかに入って、10万円くらいもらったことがあります。でも技術もなかったし、絵もうまくなかったから漫画家にはならずに実写の方に行ったんですけどね」と転向したルーツを語った。
その後も、自撮りでフラッシュを使用したような影が独特な世界観を生んでいる「麻雀飛翔伝 哭きの竜」の話や、「週刊少年ジャンプ」という戦場で、ジャンルや主人公のあり方などを軽々と超えていった「ジョジョの奇妙な冒険」の話など、漫画トークは技術論を含めた内容へと深化。そして「作家性とは自分で物語を作ること」という話の流れから、岩井から真鍋へ「僕は最近は原作ものをやっていないですが、ウシジマくんのLGBTの話は愛してやまないエピソードなので撮ってみたい」とラブコールを送る一幕もあった。(取材・文:壬生智裕)
『リップヴァンウィンクルの花嫁』ブルーレイ&DVDは発売中