ペドロ・アルモドバル監督、メリル・ストリープとの夢のタッグ消滅を語る
映画『トーク・トゥ・ハー』『ボルベール <帰郷>』などでおなじみのスペイン映画界の巨匠ペドロ・アルモドバル監督が、12月2日(現地時間)ニューヨークのアップルストア開催のイベントで自身の過去を振り返った。
オープニングシーンへのこだわりについて「僕が子供だった1950年代の映画は、テクニカラーの映像が鮮明で、僕にとってはその世界に入り込みたいと思うくらいリアルだった。僕の映画も、そんな激情的な感覚をにおわせるカラーがオープニングで使われている。新作の『ジュリエッタ』は、他の僕の作品に比べれば色彩は薄く、控えめなカラーを使用しているように思えるが、それでもオープニングでの明るいカラーの使用は避けられなかった。もちろん、そんな(カラーを使用する)手法は、自然でリアルなものではないが、僕は(カラーの)表現の方法でリアルにしている」と語った。
『ジュリエッタ』はメリル・ストリープを主演に考えていたそうだ。「僕はアリス・モンローが記した原作の土地、バンクーバーを訪れたが、そこの太陽の光(ペドロは強い光が苦手)で気が滅入ってしまって、プロダクションパートナーである弟アグスティンに『ここには居られない』と伝えたくらいだ。あの時は、映画『私が、生きる肌』の宣伝でここニューヨークに居て、バンクーバーで撮影できることなら、ニューヨークでもできるはずだと思い始めていた。そこで、これまでさまざまな映画祭や賞の授賞式で会っていたメリル・ストリープに会って、彼女を主演に据えて映画の製作を考えていることを伝え、ホテルに来てもらって2時間話し合った」と明かした。その後、自身の英語能力と、母親と娘の関係がスペインに適していたことからスペインに舞台を変え、夢のタッグは消滅したそうだ。
自身の作品をアメリカでリメイクする可能性について「『神経衰弱ぎりぎりの女たち』の米版リメイクをオファーされたことがあったが、自分の映画をリメイクする気はなかった。ただ、他の監督がリメイクしたならば、観たいとは思っていた。その時はジェーン・フォンダがあの映画のリメイクの版権を持っていて、僕がオファーを断ったら、彼女はハーバート・ロスを監督候補として考えていた。それから初稿を書き終えはしたものの、ジェーンが当時夫だったトム・ヘイドンと離婚し、その後彼女は映画界をしばらく引退してしまった」と明かした。(取材・文・細木信宏/Nobuhiro Hosoki)