ADVERTISEMENT

「光る君へ」月を撮影したのは元NHKのカメラマン!チーフ演出がまひろと道長と月を語る

第31回より月を見上げるまひろ(吉高由里子)と道長(柄本佑)
第31回より月を見上げるまひろ(吉高由里子)と道長(柄本佑) - (C)NHK

 15日に最終回を迎えた吉高由里子主演の大河ドラマ「光る君へ」(NHK総合・日曜午後8時~ほか)が15日、最終回を迎えた。平安時代に、のちに1000年の時を超えるベストセラーとなった「源氏物語」を書いた紫式部(まひろ/吉高)の生涯を、時の権力者・藤原道長(柄本佑)との関係を軸に描いた本作では初回から後半に至るまで、まひろと道長がそれぞれ月を見上げる描写があった。この意図について、チーフ演出の中島由貴があらためて語った。

【画像】月を見上げるまひろと道長

 大河ドラマ「功名が辻」(2006)や、社会現象を巻き起こした「セカンドバージン」(2010)、吉高と柄本が共演したドラマ「知らなくていいコト」(2020・日本テレビ系)などラブストーリーの名手としても知られる大石静がオリジナル脚本を手掛けた本作。まひろと道長の出会いは幼少期、川辺でのこと。飼っていた鳥が逃げてしまい、べそをかいていたまひろ(落井実結子)を、三郎(道長の幼名/木村皐誠)が慰めた。まひろは下級貴族、三郎は上級貴族と身分の差がありながらも二人は惹かれ合い、互いに別の相手と結婚してからも数奇なめぐり合わせから絆が絶たれることなく、秘密の関係は続いた。

ADVERTISEMENT

 月を見ては互いを思っているかのようなまひろと道長。二人の強い結びつきの象徴ともとれるこの描写を盛り込んだ経緯を、中島はこう話す。

 「おそらく大石さんのアイデアだったと思うのですが、本打ち(台本の打ち合わせ)の段階で同じ月を見ている画を入れたいと。二人はなかなか一緒にいられないので、月を介して通じるといったような。月が片割れ、のようなニュアンスです。直接言葉を交わせないのだけれども間接的に思い合うというのは初回から決めていたことで。それが大人になっても引き継がれていくっていう流れだったと思います」

 月を撮影したのは、元NHK職員のカメラマン渡邊雅己。渡邊と旧知の仲であるドラマの編集担当スタッフを介して依頼したという。

 「現在は北海道に住んでいらっしゃる方で、もともとドキュメンタリー系のカメラマンをされていたとのことですが、自然や天体も撮っていらっしゃって。人工の光が届かないところまで足を運んでいただき、本当にたくさんの月を撮っていただきました。雲がかかっているもの、三日月、半月、満月……。上弦、下弦、大きさのバリエーション、月の他にもタイムラプス(※一定の間隔を空けて撮影した画像をつないで動画にすること)で夜空や雲、北斗七星も撮ってくださいました。月を見るシーンはあらかじめ台本に書かれているので、その時々でどの月にするのかを考えて映像にはめていった感じです」と中島は撮影の裏側に触れる。

ADVERTISEMENT

 月を巡るシーンにおいて、第31回「月の下で」ではまひろと道長が初めて月にまつわる会話を交わした。まひろがふと道長に「人はなぜ月を見るのでしょう」と投げかけ、道長は「誰かが今、俺が見ている月を一緒に見ていると願いながら俺は月を見上げてきた」と答える。ト書きには「決壊しそうな想い」とも。二人が亡き散楽の一員・直秀(毎熊克哉)に思いを馳せる一幕もあったが、このシーンは中島にとっても思い出深いものになった。

 「お二人にはアングルを変えながら何テイクもやっていただいてたので大変だったと思いますが、非常に美しくせつなく素晴らしいシーンになったと思います。この日はずっと二人きりの撮影で、セリフも多くてどこも気を抜けず、くたくたになったのではないでしょうか。私は(連続テレビ小説)『スカーレット』で二人しか出ない回を演出したこともあったので、吉高さんと柄本さんに『私はやったことあるよ』って言ったら『そういう問題じゃないから!」と(笑)。『ごめんごめん、私の話はどうでもいいよね』って(笑)」

 なお、第31回はまひろに「源氏物語」の着想が降りてくる記念すべきエピソード。道長と月を見上げるシーンはある意味、まひろの節目ともなる重要な場面だった。

ADVERTISEMENT

 「『源氏物語』が生み出される直前のシーンですよね。まひろと道長は、一歩間違えると元サヤに収まりそうなシチュエーションで。第27回の石山寺では二人が焼け木杭に火がついた状態になって、まひろが道長の子を身ごもっていますが、第31回の時点ではまひろがもう元には戻らない覚悟を持っていて、違う次元に行っている。なぜなら、物語を書き始めているから。だから、作家として火がつくような方向に向かってほしいのだけれども、視聴者の方には『(元に戻るか戻らないのか)どっち!?』と、ドキドキする余地も残したかった。初めは二人で月を見ているのがだんだんお互いを見始めたりっていうのはありつつ、帰る前に(道長が)まひろの方に行くの行かないのみたいな。最後はまひろが小さく拒否し、対して道長は踏みとどまるのですが、微妙なニュアンスを表現しています。道長が帰ると言っても、まひろはもう書くことに意識がいっているので、表情もそれまでと違うと思います。道長によってまひろの作家としてのスイッチが入っていくというような流れをしっかり描きたいと思いました」

 まひろと道長のシーンに限らず、本作には多くの美しい月が登場。道長の父・兼家(段田安則)の死を描いた第14回「星落ちてなお」では赤い月が、安倍晴明(ユースケ・サンタマリア)が死去する第32回「誰がために書く」では星空に輝く三日月が、そして内裏で火事が発生した夜には皆既月食が見られ、幻想的な趣をもたらした。(取材・文:編集部 石井百合子)

  • mixiチェック
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • ツイート
  • シェア
ADVERTISEMENT