STAND BY ME ドラえもん (2014):映画短評
STAND BY ME ドラえもん (2014)ライター3人の平均評価: 2
自分たちの「古典」がバトンリレーされる
親子連れがいっぱいの映画館で鑑賞。藤子F先生の生んだよりぬきのオリジナルエピソードが、いよいよ今の子供たちへ本格的にバトンタッチされることに震えた。リアルタイム世代が薦めたい「入門編」として格好の一本が誕生したと思う。
作り手がイメージしたのは「和製ピクサー」だろうか。CGモデルではしずかちゃんの美女子ぶりが話題だが、筆者はドラえもんのキャラデザインの強度に改めてノックアウト。本棚などミニチュアの作り込みも凄い。細部にこだわった原作原理主義に感謝したい。『さようなら、ドラえもん』(てんとう虫コミックス6巻)から『帰ってきたドラえもん』(同7巻)への流れは、やはり日本製ジュブナイル史上最強だ。
感動を強要する秘密道具“搾涙器”を発明したのび太の回想録か
3DCGの質感によって彼がロボットであったことを再認識し、逆説的に2Dが喚起する想像力の大きさを思い知る。根本的な問題は企画と脚本にある。出会いと別れを描く有名な7大エピソードを95分に詰め込み、感動譚ツギハギの節操なき「ALWAYS 永遠のドラ」状態。緩急に欠け、話の移行は団子の串刺し的だ。“ドラ泣き”は、宣伝コピー以前に作り手の思惑にあった。感動とは作劇の結果に沸き起こるものであって、作為的に、のべつまくなしに与えられて心地よいものではない。これはドラえもんと上手く決別できず情緒過多になり、周囲にも感動を強要する秘密道具“搾涙器”を発明した、中年のび太の回想録だと考えれば合点がいく。
あのCMとはちょっと違う、妻夫木のび太も聴けるけど。
なんというか、下品というか、やたら「泣ける」ことばかり押し出したつくりにゲンナリ。そんなに熱心な藤子F好きでもない僕さえよーく覚えている、涙腺を刺激すること確実な傑作エピソードが名台詞もそのままに連打されるんだから、知らない人が観りゃ泣けるのは当然だ。…ま、それは企画としては「有り」だとしよう。でも「無し」なのは売り物の3D(アニメーションを立体的に作るという面で)。TVで毎週観られる2Dより、表情、動き(特に細かい仕草)の表現があからさまに劣る。二度にわたる一人称目線の飛行シーンや背景の書き込みは素晴らしい点もあるが、それは「ドラえもん」というコンテンツが求めるものではまったくないだろう。