映画クレヨンしんちゃん ガチンコ!逆襲のロボとーちゃん (2014):映画短評
映画クレヨンしんちゃん ガチンコ!逆襲のロボとーちゃん (2014)ライター4人の平均評価: 4.8
前・今期のアニメ界を揺るがすクリエイターが激突!
「キルラキル」の中島かずきに、「ピンポン」の湯浅政明と、前・今期のアニメ界を揺るがすクリエイターが携わってることで、“いつもと違う感”を出していたが、その仕上がりも『戦国大合戦』以来の素晴らしさ。その設定からリブート版『ロボコップ』でも描かれた家族愛を予感させるが、それは「クレしん」ではあたりまえ!
深刻なテーマに対し、ギャグのオブラートで包みながら、『リアル・スティール』で『オーバー・ザ・トップ』な強さで応えるニッポンの父親への応援歌。『パシフィック・リム』に燃えたオトナたちへの“追試”とも受け取れるが、五木ひろしの「契り」は『大日本帝国』の主題歌ということを踏まえて観ると、さらに深い…。
ひろし最高!(徹底したおっさん向け)
『クレしん』の設定が時代のリアルとズレてきたことは最近よく指摘される。野原ひろし(35歳・係長)のプロフが庭付き一戸建て&二児の父&妻は専業主婦って、どんな大企業だよ!っていう。
一方そのズレのおかげで、ひろしが経済力もある高スペックな家庭人と、大人の男たちにリスペクトされる現象も起きている。そんな現代日本のニューアイコンとしてのひろしの魅力に集中した本作の狙いはバッチリだ。
ただ中島かずき脚本は「今の35歳」への配慮はないように思える。ひろしが「いくつになってもロボットの合体は燃えるなあ」って、これじゃゲッターロボ世代の台詞(笑)。他にも『がきデカ』などR45ネタに閉じすぎな気も。
強く美しい日本復活を目論むキナ臭い今へ痛快なロケットパンチ!
隠れテーマが鋭い。情けない父親が強靱な万能ロボットに改造されて発覚する、謎の組織による計画。それは“日本をしつけ直す”父性復権の目論みだ。男どもがロボットアニメに惹かれる深層心理に、この国を覆うムードの根を見出し、強き父と弱き父の相克から、本当の強さ/美しさとは何かを問いかける。組織を操る黒幕の正体がリアルで恐ろしい。
巨大ロボ“五木ひろし”は一見唐突なギャグに思えるが、その歌が示唆するものに息を呑み、ラディカルな批判精神に思わず膝を打つ。『~オトナ帝国の逆襲』に勝るとも劣らないカルト化、必至。『永遠の0』ブームに漂うキナ臭さにも果敢に挑む、破壊力満載の痛快な傑作アニメだ。
ひとことで言ってシリーズ屈指の傑作!!
10作目『嵐を呼ぶアッパレ!戦国大合戦』までは毎年のように傑作が続いたクレしん映画版。まさにそのときクレしん本を編んだことのある中島かずき脚本だけあり、スピーディで奇抜な動きと底抜けのナンセンス、シュールな設定デザインが炸裂する初期作のテンションが実に12年ぶりに完全復活。ルンバから巨大ロボまであらゆるロボ要素に執着しつつ、原恵一作品からお約束となった感動感涙要素(生体記憶を完コピされた人工頭脳の悲哀)もしっかり押さえた驚きの完成度だ。動きや絵柄、構図の大胆さが湯浅政明リスペクトだな、と思って観てると…なんと絵コンテその他で湯浅氏全面参加!判ってるねえ。高橋渉監督に早くも連投熱烈希望。