平沢 薫

平沢 薫

略歴: 映画ライター。視覚に訴えかけるビジュアルの派手な映画がお気に入り。「SCREEN」「SCREEN ONLINE」「Movie Walker」「日経エンタテインメント!」「DVD&動画配信でーた」「キネマ旬報」「SFマガジン」「映画.com」等で執筆。他に「キングスマン:ゴールデン・サークル」ノベライズ、「グレートウォール」ノベライズ、「X-ファイル 2016」ノベライズ、「フランケンウィーニー」ノベライズ、「「ターミネーター:新起動/ジェニシス ビジュアルガイド」翻訳など。ウェブで映画やTVドラマのニュースを追いかけ中

近況: 「トゥルー・ディテクティブ」シリーズ第4弾、ジョディ・フォスター出演の「トゥルー・ディテクティブ ナイト・カントリー」@U-NEXTを視聴中。夜が続くアラスカの町。先住民たちの間の言い伝え。超常現象のように見える事件。これまでのシリーズとはまったく違う雰囲気が新鮮。

平沢 薫 さんの映画短評

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  • 胸騒ぎ
    ブラムハウスのリメイクも納得のリアルな心理ホラー
    ★★★★★

     ブラムハウスが、ジェームズ・マカヴォイ出演、『フレンチ・ラン』のジェームズ・ワトキンス監督でリメイク映画『Speak No Evil』を製作した話題作。

     旅先で出会って親しくなった一家は、本当に彼ら自身が語る通りの人々なのか。そんなありそうな設定で、誰もが思い当たる、よくある心理の動きが、いくつも重ねられていく。ふとした折に感じた違和感の理由が分からず、そのために自分の直感を否定したくなる気持ち。自分が無意識のうちに抱いている願望を叶えるために、目の前にある不都合を見なかったことにしたくなる気持ち。さらに「あの時、ああしていれば」が何度もある。そのすべてがリアルで恐怖が後を引く。

  • 無名
    1940年代の上海、レトロでスタイリッシュな映像に酔う
    ★★★★★

     1940年代の上海。都会の夜の中でスパイたちが裏切り合う。そんな設定からイメージする通りの、徹底的にレトロでスタイリッシュな映像で、スパイたちの哀しく切ない物語を描き出す。建造物、室内の調度品のデザインから、男たちがみな着用するソフト帽や三つ揃いのスーツ、モノクロではないのにモノクロを思わせる色調、もちろん画面の構図にまで、すべてにこの美学が貫かれている。この世界観にじっくり浸るのが心地よい。

     スパイの欺き合いに相応しく、ストーリーにも技巧があり、時間を行き来して何度か登場するシーンが、後から別の意味をもって見えてくる。トニー・レオンとワン・イーボーのスタントなしの格闘も見もの。

  • 殺人鬼の存在証明
    実在の殺人鬼を下敷きに、重層的な物語を描く
    ★★★★★

     1987年から1991年のロシアがソビエト連邦だった時代、ある刑事が36人の女性を殺害した連続殺人犯の捜査にのめり込んでいく。犯人の人物像は実在の連続殺人犯アンドレイ・チカチーロを踏まえており、捜査指揮官の名前イッサも共通だが、よくある捜査に溺れていく刑事ものとは少々異なり、それ以外の要素が多い重層的な物語が魅力。

     刑事の前には警察組織の闇が立ち塞がり、それが彼を蝕んでいく。逮捕した犯人には誤認逮捕の可能性が生じて、彼が真犯人なのか確信が持てなくなる。そしてその背後に、もうひとつの予期しなかった物語が浮かび上がってくる。その背後で北の森はどこまでも暗く、室内の空気はいつも湿って暗い。

  • キラー・ナマケモノ
    ダジャレから生まれた?爆笑ホラーコメディ
    ★★★★★

     原題Slotherhouseは、Sloth(ナマケモノ)とSlaughterhouse(屠殺場)を掛け合わせた造語。それを登場人物がセリフで言って周囲がゲンナリするというシーンがあり、本作はきっとこのダジャレを思いついたから製作されたんじゃないかと思わせる。そういう、ゆる~い感じが醍醐味の殺戮アニマルvs女子高生コメディ。

     ナマケモノはパペットであることを隠そうともせず、リアリズムとは無縁。ナマケモノがスマホを使ってSNSを悪用したり、自動車を運転したりする。そこに、窓から転落したと思ったら覗き込むと姿が見えないなどの、ホラー映画へのオマージュも続々。徹底的に明るい色調と雰囲気も楽しい。

  • 悪は存在しない
    気づくと、息をひそめて画面に見入っている
    ★★★★

     カメラが、そこで起きていることに耳を澄ましている。その出来事が語りかけてくることを、聞き逃すまいとしている。1シーンが長く、手持ちではなく定点に固定されたカメラは、何かにズームすることなく、レンズの前にあるものを静かに撮り続け、そこで生じる音、人々の会話を録り続ける。気づくと、こちらもカメラ同様、息をひそめて、目の前で起きていることに見入っている。

     厳しい自然と共存して生きる人々の土地に、開発業者がやってくるが、経営者は補助金が必要なだけで、説明に来た社員2人も仕事をしているのみ。悪意はなくても取り返しのつかない事態は起きる。まだ雪の残る高原の冷たく清澄な大気が胸に沁みる。

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