ハロルド・フライのまさかの旅立ち (2022):映画短評
ハロルド・フライのまさかの旅立ち (2022)熱演だけではない匠の技だからこそ、本物の感動に到達する
800kmといえば、日本では東京から広島くらいの距離。それを定年退職した男が歩き切ろうとする設定は、実話ではないにしろ驚きは大きい。持ってる金銭はわずか。最初から困難エピソード満載で胸が締め付けられる…と思いきや、喜怒哀楽あちこちにシフトして映画らしい盛り上がりも見せていく。その流れが、じつにスムーズ!
ドラマの根本には「誰かの背中を押す言葉」「感謝の心」というテーマがどっしり構え、多くの人が素直に共感しやすい安心設計。その共感度を上げる潤滑油が、ジム・ブロードベントの熟練の妙演で間違いなく、静けさと穏やかさでキャラクターを築き、要所で激情を加えるプロの仕事。その麗しき表現に心の中で嗚咽する。
この短評にはネタバレを含んでいます