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死の谷間 (2015):映画短評

死の谷間 (2015)

2018年6月23日公開 98分

死の谷間
(C) 2015 Z4Z Film Production UK Ltd. All rights reserved.

ライター3人の平均評価: ★★★★★ ★★★★★ 3

なかざわひでゆき

世界が滅びた時、人間に残されるものは何なのか?

なかざわひでゆき 評価: ★★★★★ ★★★★★

 マーゴット・ロビーが『ウルフ・オブ・ウォール・ストリート』と『フォーカス』の間に主演した、3年以上も前の作品がようやくの日本公開だ。核戦争後と思われる終末世界。無学だが素朴で信心深い若い白人女性と、教養のある無神論者で合理主義の中年黒人男性が平和な共同生活を始めるも、そこへ若くて力のある白人青年が現れたことで、3人の関係に緊張が走っていく。
 果たして世界が滅びた時、人間に残されるのは知性なのか信仰心なのか、愛情なのか欲望なのか。宗教や人種など様々な問題を絡めながら観客に問いかけていくタイプの作品だ。かなり地味な映画ではあるものの、ほろ苦さを残す余韻の味わいなど悪くない。

この短評にはネタバレを含んでいます
清水 節

終末後を生きる男女のドラマは、第三の人物の登場で通俗に堕す

清水 節 評価: ★★★★★ ★★★★★

 世界の終わりを生き延び、信仰をよすがに孤独をしのぐ美女マーゴット・ロビーが、もうひとりの生存者である科学者の黒人男性キウェテル・イジョフォーと出会う。価値観の異なる者同士が反発し間合いを取りながら、徐々に接近していくドラマはサスペンスフルだ。単なる世界再生劇のみならず、極限状況における人間の存在を形而上学的に問うミニマムな物語は、原作「死の影の谷間」になき第三の人物である肉体労働者の白人男性クリス・パインの登場によって、たちまち目指す着地点が通俗的なものに堕していく。第三の人物を子供や老人にすれば、まだ拡がりはあったかもしれない。男女間の関係性のバランスの心理劇へのシフトは、改悪である。

この短評にはネタバレを含んでいます
平沢 薫

3人だけの心理劇に、多種多様な主題が潜む

平沢 薫 評価: ★★★★★ ★★★★★

 黙示録SFだが、核は静かな心理劇。登場人物はわずか3人、描かれるのは彼らの関係性のみ。そのように構成要素を必要最小限に絞りこんでいるのに、その物語には、同胞意識、恋愛感情、人種差別、宗教観など多種多様かつ複雑なテーマが盛り込まれている。
 彼ら3人の言動と行為は一致しないが、それは彼らの意識と無意識が同じものではないからだ。その二つの微妙な差異が、人物たちの表情や動作の微細な変化として表現されて、その積み重ねによって物語が紡がれていく。その背景に緑の生い茂る森がある。
 監督は「コンプライアンス 服従の心理」のクレイグ・ゾベル。映画を見終わった後に、長く余韻が残る。

この短評にはネタバレを含んでいます
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