バックコーラスの歌姫(ディーバ)たち (2013):映画短評
バックコーラスの歌姫(ディーバ)たち (2013)ライター2人の平均評価: 4
歴史は「脇役」で作られる
この年末は傑作音楽ドキュメンタリーが多数公開されているが、最も音楽マニアのツボを突くのは本作かも。
なんせポップ・ミュージックの見取り図を裏側から補強する視座が明晰。例えばL・リード「ワイルド・サイドを歩け」、R・ストーンズ「ギミー・シェルター」、D・ボウイ「ヤング・アメリカン」など、ブラック・ミュージックに憧れる白人ロック・アーティストが「黒っぽい音」をいかに導入したかについて、歌姫を主軸に語られる。それも主に60~80年代。以降は打ち込みの一般化で需要=仕事が激減した現実も。
むろん「脇役」や「裏方」の人間ドラマとしても胸を打つ。筆者のようなフリーライターもまさに“バックシンガー”だ。
音楽の原点を改めて思い知らされる秀作
音楽の裏方を支えるバックシンガーたちにスポットを当てたドキュメンタリーである。登場するのは主に女性ボーカリスト。いずれも洋楽ファンには馴染み深い大御所だ。
時にはソロ歌手以上の実力が求められながら、なぜ彼女たちは引き立て役に甘んじるのか。それを天職とする者もいれば、ソロとして成功を掴み損ねた者、中にはリサ・フィシャーのようにグラミーまで受賞しながらビジネスを嫌って裏方へ逆戻りした者など、各人の成功と挫折から音楽業界の厳しい現実が浮かび上がる。
それでもなお音楽を愛して歌い続ける彼女たちを通し、本作は“喜びを分かち合う”という音楽の原点を改めて想起させる。全音楽ファン必見の秀作だ。