私たちのハァハァ (2015):映画短評
私たちのハァハァ (2015)ライター3人の平均評価: 4.7
思春期の荒い息遣いが聞こえる快作
女子高校生4人の“追っかけ”話なんてオッサンにはつまらんだろうと……思っていたらこれが意外な、というか、とんでもない快作!
テンションの上がったシーンは確かにカシマイいが、しんみりするところ、緊迫するところのメリハリが利いていて感情の複雑さがビビッドに伝わってくる。ケンカを通して、それぞれのクリープハイプとの距離感を明確にしている点も巧い。
POV主体ながら俯瞰するべきところはきちんと俯瞰し、つねに最善の映像を選択している点も見事。10代の時にしか持ちえない凄まじい瞬発力や、情熱の高まりが懐かしく切なく、しっかり胸に痛かった。文句なしに、今年見るべき日本映画のひとつ。
今年の青春映画のマスターピース
大好きなクリープハイプに会いに行く――これがヒロインたちのゴール設定だが、実のところ真の目的は「旅」そのものだ。当然にもデジタルカメラを携帯してのJK珍道中。
時代が変われば、まず文法が変わる。監督・松居大悟による巧みな「自撮り」と「劇映画」の接続は、フェイクドキュメンタリーの応用形として世界最前線級。ゆうばりファンタであの『バードマン』を抑えて賞に輝いたのは、すごくリアルな評価!
同時に語られる内容自体は、いつの時代の若者も経験する「今しかない、特別な時間」だ。「1mmも眠たくないわ!」との言葉に遠い日の記憶をくすぐられた筆者は、何度も岡崎京子の『東京ガールズブラボー』を想い出していた。
遠征はつらいよ。
自転車でNHKホールを目指す女子高生4人組の姿は、“クリープハイプ版『抱きしめたい』”いうより、『おニャン子ザ・ムービー 危機イッパツ!』で横浜スタジアムを目指す江口洋介と宮川一朗太に近い。とはいえ、すぐに自転車を乗り捨て、自由に気ままにヒッチハイクし、果ては新幹線代欲しさにキャバで働く彼女たちの姿は、とにかくリアルで、逆にムカつくほど巧い。さらには、ガチ恋女子の想いが空回りし、一気に4人に亀裂が入ったときの空気感が素晴らしく、これまでハズシのない松居大悟監督作のなかでも、いろんな意味でベストといえる仕上がりに。ただ、どっちつかずなビデオカメラの使い方が引っかかってしまった点は悔やまれる。