がむしゃら (2014):映画短評
がむしゃら (2014)ライター4人の平均評価: 4
熱く支持され続けてロングラン。次は全国順次公開へ
ムーブオーバーしていたが、ついに東京での上映があと一週間を切ったのでプッシュ! といっても後だしもいいところなのであまり語られない高原監督の観点から。かつてシナリオを担当、’03年度ピンク大賞作品賞、脚本賞を得た上野俊哉監督『猥褻ネット集団 いかせて!!』(シナリオタイトル「曖昧」)は、ネット集団心中をテーマに生と死の境界を描いていた。
(筆者も知人だった)上野監督は’13年、病気で早世。本作はレスラー・安川惡斗、女優・安川結花、本名・安川祐香が彼岸に渡らずこちら側に残り、全てをさらけだす姿に高原監督はカメラを向けた。実は筆者も昨年病気で死にかけた身。此岸で闘う者への監督の声が聴こえた。
人生、楽しいも苦しいも生きているからこそ
女子プロレスに疎い筆者はこの映画で初めて安川悪斗の存在を知った。リングの上ではヒール役だが、素顔はほんわかキュートな不思議ちゃん。そんな彼女の現在に至るまでの軌跡を追ったドキュメンタリーだ。
イジメに自傷行為、そして自殺未遂。はにかみ混じりに淡々と語られる彼女の過去は、なかなかに壮絶だ。レスラーになった今も怪我や病気で体はボロボロ。それでも、彼女は一心不乱に前へ前へと突き進んでいく。
一度は捨てようとしたけど救われた命。だからこそ一秒たりとも無駄にはできない、自分らしく精一杯生き抜いてやる。逆境バンザイ!と自嘲気味に笑う彼女の姿に、かえって励まされる観客も多いはずだ。
カメラの前で語ることの意義
図らずのも、顔面崩壊試合で時の人となった女子レスラー安川惡斗。重傷を負いながらもリング復帰を目指し、かつ対戦相手の世Ⅳ虎を気遣う精神的な強さはどこから来るのか? それを知りたければ本作を観ればいい。
イジメにレイプ、解離性人格障害など弱冠28年には波乱万丈過ぎる半生だ。だが彼女は物語を創作したり、女優、そしてリングと、表現の場で心を解放しながら精神のバランスを保ってきた。本作もその一貫だろう。心理療法として芸術がいかに効果的かを実証した作品でもある。
何より彼女の苦難を思えば、己の悩みなんて米粒サイズと誰もが敗北感に打ちのめされるはず。これほど人に生きる勇気を与える作品はないと断言する。
不屈のGIRL’S FIGHTに感動。以上!
AV男優に取材した『セックスの向こう側』で話題を呼んだ高原秀和監督が力作を放った。女子プロレスの人気ヒール、安川惡斗の赤裸々な姿に迫ったドキュメンタリー。彼女の壮絶な人生から見えてくるのは極めて繊細な素顔だ。
安川には結花名義で女優の活動もあり、日本映画学校での実習作も紹介される。惡斗=“アクト”のリングネームが示すように、生き難さを抱えた彼女にとって「演じる」ことが「生きる」ことをいかに補完してきたか――この考察は本作の肝だろう。
「惡斗」「結花」、本名の「祐香」が渦巻く安川の複雑な「自分」。そこからがむしゃらに生きようとするシンプルな魂が猛然と立ち上がってくる様にはマジ胸が熱くなる!