偉大なるマルグリット (2015):映画短評
偉大なるマルグリット (2015)ライター2人の平均評価: 4
類稀なる音痴の愛すべき歌姫に魅了されます!
趣味が嵩じてプロのオペラ歌手を目指す大富豪マダムと、なんとかそれを思い止まらせようと画策する夫。なぜなら、彼女は稀に見るほどのひどい音痴だからだ。
周囲のおべっかを真に受け、本気で自分の才能を信じてしまうヒロイン。それだけなら単なる金持ちの滑稽な勘違いなのだが、しかし困ったのは彼女の音楽への情熱が本物であること、そして少女のように純粋で心優しい女性であること。なので、誰も本当のことを言い出せないわけですよ(笑)。
実在のモデルがいるという主人公マルグリット。そのあまりにも憎めないキャラが実に魅力的だ。そんな彼女の胸に秘めた孤独に心動かされる。ちょっぴりほろ苦くも暖かい気持ちになれる良作。
ポスターの絵柄による思い込みは、損ですよ。
超絶音痴な男爵夫人マルグリットがオペラ歌手としてデビュー!! という設定やポスターの絵柄からコメディを想像しがちだけど、愛を求めた女性の実に切ない物語でした。確かに笑える部分は少なくないが、それはマルグリットを取り巻く周囲の狂騒や画策だったり、裕福な貴族らしい虚勢や世間知らずからくる言動だったり。しかし前半でマルグリットの歌へのこだわりにフォーカスするグザヴィエ・ジャノリ監督は、徐々に彼女がうたう理由を解き明かす。それが判った瞬間、見ているこちらの胸が痛くなった。モデルとなったアメリカ人女性が巻き起こした騒動を使って、まったく別次元のラブストーリーに仕上げた監督の手腕はお見事!