At the terrace テラスにて (2016):映画短評
At the terrace テラスにて (2016)ライター3人の平均評価: 4
ロングラン上映も納得の面白さ!
三谷幸喜監督作が散々な状況になっている昨今、口コミしたくなる面白さであることに間違いないだろう。ときにイライラしながら、木陰にいるムササビのように見てしまう女同士のマウンティングやら、ゲス不倫やら、欲望入り乱れた修羅場やら。富裕層パーティが舞台の戯曲でありながら、『スタア』ほどブッ飛んでいないし、『恋の渦』ほどパリピ臭もない。そのバランスが見事であり、あまりに狙いすぎた『ミツコ感覚』、見た目のキャッチーさが足を引っ張った感もある『友だちのパパが好き』を経て、キャストの地味さはさておき、かなりマスな作品に着地したといえる。それにしても、ムチャクチャ踊る女=長嶺ヤス子という例え、ツボりました。
ブルジョワジーの秘かなテラスハウス
映画でも傑作を連射する山内ケンジの監督第3作。この毒気に満ちた軽やかなデカダンスは、吉村公三郎とブニュエルを混ぜたような趣だと思えた。川端康成『片腕』が参照される「二の腕」騒動から気まずさにターボをかけていく平岩紙、石橋けいの女性ふたりが最初は目立つが、結局は計7人全てが過不足なく劇を機能させる。
一度アウトプットされた言葉や行動は取り返しがつかず、瞬間的な既成事実の積み重ねが虚飾を剥がしていく。ひと幕物の会話劇スタイルを取った艶笑喜劇だが、より本質的には“昆虫学者”の眼による大企業に関わる人々、エスタブリッシュメントの風刺劇か。観念的な「シリア」と具体的な「戦闘機」が交錯するスリル!
素直に、面白かったー
監督は「ソフトバンク」や静岡限定「コンコルド」のCMで知られる山内ケンジ。
んな、アホな!な設定を、巧みな会話劇と味ある俳優たちの堂々たる演技で、説得力ある話に昇華させてしまう天才。
本作もセレブ夫人のご乱行が、パーティー参加者の本音を爆発させ修羅場へと変える。
その夫人役は石橋けい。
壮絶な死に様を見せた『女優霊』から思い切りの良さは際立っていたが、そこにグラマラスボディが放つ妖艶さも加わって魔性の女役にピッタリ。
さすが、山内作品のミューズ。
元は戯曲。欲を言えば映画らしい映像の試みがもう少し欲しかったが。
それでも限定公開が勿体無いと思えるほど、極上の大人のブラックコメディ誕生である。