ドッグ・イート・ドッグ (2016):映画短評
ドッグ・イート・ドッグ (2016)ライター4人の平均評価: 3
不愉快極まりないオープニング!
サイケなトリップ映像のなか、『グレートウォール』で消化不良を感じたウィレム・デフォーの容赦ない狂気とバイオレンスが止まらないオープニングがヤバい。不愉快極まりないが、本作の魅力はオフビートな犯罪ドラマの中にみられる、そんな悪趣味テイストだ。監督自身が街の顔役を演じるプライベートフィルム感や、シーンの繋がりなどで破綻してる箇所も見られるが、それも一種の味として見えてくる。テイラー・スウィフトの件など、脚色部分もあるが、『赤ちゃん泥棒』に失敗するニコ・ケイら、3人のオヤジが醸し出す悲哀は原作通り。とにかく『ラスト・リベンジ』と同じ主演・監督コンビの作品には見えない作家性を感じた。
ポール・シュレイダー最新作はグラインドハウス的バイオレンス
リアルな前科者の犯罪小説作家で、「レザボア・ドッグス」のMr.ブルーとしても知られるエドワード・バンカーが’95年に発表した原作を、21世紀にアップデートして映画化。とはいえ、ポール・シュレイダー監督の演出は極めて’70年代的センスに溢れており、グラインドハウス的な匂いすら漂うバイオレンス映画に仕上がっている。
元刑務所仲間3人組が人生一発逆転を狙った賭けに出るものの、結局はぶざまな末路を辿る。この手の話は散々語り尽くされてきたので新鮮味はないが、しかし特定の映画ファン層にはアピールするだろう。そういう意味ではカルトな作品。ニコラス・ケイジとウィレム・デフォーの負け犬っぷりも見ものだ。
夜がヤバイ。墜ちていく男たちの物語
原作は、少年時代から犯罪社会で生きて獄中で書いた小説で作家になったエドワード・バンカーの犯罪小説。監督は「タクシードライバー」の脚本家出身で夜と犯罪が似合うポール・シュレイダー。主演は、監督と「ラスト・リベンジ」で組んで次こそやりたい映画をやろうと誓ったニコラス・ケイジ。さらに監督の希望でウィレム・デフォーが共演。この顔ぶれから想像する通りの映画になった。どこか精神的に損なわれた部分のあるダメな男3人がある誘拐を請け負うが、途中で不都合が生じ、次第に悪運の連鎖に絡め取られていく。そんなおなじみの物語が、ブラックな笑いと夜の闇が濃い映像で描かれて、ときおりギラリと危ない光を放つ。
あの結末をどう思うかは見る人次第
バイオレンスを楽しいかのように扱っている出だしには超嫌悪感。が、そのうちに、刑務所で出会ったこの3人の 関係やら、それぞれの個性らがわかり、セリフもそこそこ良くて、 まあまあ惹きつけられていった。「本来なら手をつけるべきではない」仕事に手を出した時にどうなるかはたいてい想像がつく。それでも飽きずに見ていたら、最後に後味の悪い思いをさせられることに。あれをリアルと言うこともできるのだろう。そこは見る人が決めること。 借金のため、近年なりふり構わず映画に出ているニコラス・ケイジは、「 彼が出るならくだらないかも」と思われるほどになり下がってしまったが、やはり彼は上手い俳優だとも思わせられた。