オー・ルーシー! (2017):映画短評
オー・ルーシー! (2017)抑圧から解放された女性の暴走は、痛みを伴う人間再生プロセス
日々自分を押し殺して生きている、地味で無口で目立たない中年独身女性が、英会話教室に通い出したことから自己を解放し始める。なんて言うと、明るく前向きで元気の出る映画かと思われそうだが、なにしろこのヒロイン、それまで他人と深く関わることを避けてきたもんだからサジ加減が分からず、本音という名の暴言と冒険という名の暴走で次々と迷惑な波乱を巻き起こしていく。
限りなく好感度の低いヒロインに少なからず戸惑うが、しかしその破壊衝動は日常に潜む様々な偽善を炙り出し、周りの歪んだ人間関係をリセットするための劇薬みたいなもの。いわば、現代社会の抑圧で人間性を失いかけた女性の痛みを伴う再生ドラマだと言えよう。
この短評にはネタバレを含んでいます