我は神なり (2013):映画短評
我は神なり (2013)ライター2人の平均評価: 4.5
これを観逃すと大変だ!
こんな凄まじい傑作が2013年の時点で存在していたとは…! 『新感染』『ソウル・ステーション』と日本公開が相次ぐ鬼才(←間違いない)ヨン・サンホ監督、まさにトドメの一本。なぜアニメなのか?(笑)ってくらい生臭い人間劇だが、あまりの情念の濃さに問いも忘れて見入ってしまう。
『悪い男』+『サマリア』的な野獣おやじ(声:ヤン・イクチュン)のキャラを含め、キム・ギドクを連想する人は多いだろう。リアリズムと寓話が重なる世界で、激しい愛憎、性と暴力、信仰と洗脳など下層に散らばる問題を全てかき集めていくような展開。原題は『サイビ』(嘘、偽り)だが、もちろんそれが何がしかの真実に反転する様をこそ描いている。
気持ちいいぐらい容赦なく、救いもない。
テーマはスゴいのに、どこか調理法を間違えてしまった『ソウル・ステーション/パンデミック』だったが、その前作である本作は、アニメ作家としてのヨン・サンホの才能がフルスロットル! “真実を語る悪人(やくざなオヤジ)と、偽りを語る善人(過去のある牧師)の対決”が描かれるなか、“悪魔に憑かれた男”の烙印が押されるオヤジのマジメな娘の転落っぷりは、絶句の一言。「シガテラ」など、古谷実好きを自負している監督だけに、とにかく気持ちいいぐらい容赦なく、救いのない展開ではある。とはいえ、家族愛やバイオレンスといった、いかにも韓国映画的な要素も含まれており、観終わった後の疲労感と虚無感はハンパない。