かぞくへ (2016):映画短評
かぞくへ (2016)真の意味で、ダルデンヌに拮抗する日本映画
「愚かさ」で転がすタイプの映画だが、そこに胸が苦しくなるほどのリアリティが密着している。主人公はカネの件で下手を打ち、ある種の真面目さから袋小路に向かう。脇が甘く、判断ミスを繰り返し、相談せずに一人で決め、格好のつけ方を間違う…。この不器用さは愛されキャラにも仕立てられる要素だが、本作は彼を苛烈なスパイラルに放りこむ。
これは階層とコミュニケーションで決定される現代社会が強いるゲームなのか。その中でズタボロになっても、世界は捨てたもんじゃないと言えるのか。監督・春本雄二郎が影響を受けた先人の中にダルデンヌ兄弟を挙げていたのは納得。『サンドラの週末』と一緒に観たい。あと役者陣の顔が本当にいい!
この短評にはネタバレを含んでいます