君が君で君だ (2018)：映画短評

　大好きな女の子をただただ遠くから見守り続けるために、自分自身の自我も欲望も生活も全て投げ打ってストーカーとなった男たちの物語。もはや突き抜け過ぎて狂気と化した片思いの純愛（？）にはドン引き必至だが、しかし恋に落ちた人間というのは一歩間違えると無様で滑稽で情けないもの。そういう意味で、恋愛感情の本質は確かに捉えられている。まあ、とてもじゃないが共感は出来ないけどね（笑）。
　そんなやり過ぎな男たちを演じる池松壮亮・満島真之介・大倉孝二のぶっ飛んだ狂いっぷりがまた壮観。DVゲス男の高杉真宙、やさぐれオバサンのYOU、チンピラ男の向井理と、脇役陣の怪演もなかなか楽しませてくれる。

ふた昔前なら“究極の恋愛映画”のキャッチが付いたかもしれないが、このご時世だと、ドン引き必至の問題作！　とはいえ、松居大悟監督の表向きの顔しか見えなかった前作『アイスと雨音』を手放しで称賛できなかった人間としては、脚本を担当した『チェリーボーイズ』に続き、ここまで本性をむきだしにされたら絶賛するしかない。“好きな人の好きな人になる”設定に、まったく先が見えない“毒を以て毒を制す”展開。そして、至るところからほとばしる福岡熱！　「きみが心に棲みついた」のドSキャラ延長線といえる向井理もいいが、クズなのに王子キャラ（後に羽生君）となる高杉真宙の壊れっぷり。間違いなく、今年偏愛したい一本！