ヴィヴィアン・ウエストウッド 最強のエレガンス (2018):映画短評
ヴィヴィアン・ウエストウッド 最強のエレガンス (2018)ライター3人の平均評価: 3
パンクの女王から活動家へ! エネルギッシュ人生の裏側は?
セックス・ピストルズとともにパンクシーンを疾走し、今では王族も身につけるドレスをデザインするV・ウエストウッドの人生は誰もが想像するように破天荒だけど、きちっと筋が通っていることがよくわかる。服のデザインも政治信条も体制に流されることなく、自分流を貫く。今は環境問題に夢中のよう。ブランドの成り立ちや元パートナーとの確執を交えながら明らかになるのは決して進化を止めないヴィヴィアンの姿勢で、そのエネルギッシュな生き方に感心するのみ。監督はそんな彼女から本音を引き出し、受け身とも思える部分をカメラにさらしたが、ご本人は仕上がりへの不満を公表。こういう側面は相変わらずパンクですな。
彼女の服やアクセを身につける前に観とけ!
御年77歳、デイムの称号を持つ、生涯現役のパンク少女のカッコ良さに終始惚れる。“「NANA」に登場するブランド”程度しか知らなきゃマストな一本だ。セックス・ピストルズについて、「悲しすぎる」の一点張りなのは残念だが、その後、語られるマルコム・マクラーレンの下衆エピソードを聞けば、納得かもしれない。しかも、コントかと思うほどのBBCのTV番組でのイジられっぷりなど、80年代後半の世間の評価の低さに、改めて驚愕。今もダメ出ししまくるこだわりに、実子も納得するしかない25歳年下の元教え子の旦那とのアツアツっぷりなど、一気に観られるが、ぶっちゃけサプライズ演出が欲しかった感はアリ。
誰もが憧れる、プロフェッショナルの理想の姿
世界中にブランドを展開しながらも「量より質」と、自分の納得のいかないアイテムは売りたくないという矜持。金儲けにはまったく関心がないヴィヴィアンの生き方は一見、パンクなようで、ひたすら仕事人として真っ当な思想を貫いているだけであり、職業を超えて誰もが感銘を受けるだろう。
自身も強烈な個性と才能をもちながら、現ブランドをヴィヴィアンと同等に支える3番目の夫が、あくまで裏方に徹する「内助の功」も、伝統的な性の役割の概念を軽々と覆し、観ていて気持ち良い。
映画としての作りはオーソドックスだが、対象である彼らの言動を強烈な吸引力に転化する。その点でドキュメンタリーとして成功していると言える。