ノーザン・ソウル (2014):映画短評
ノーザン・ソウル (2014)ライター3人の平均評価: 4.3
イギリス青春映画の妙味を継いだ、まばゆい快作
素朴な庶民性の中に若者の激情を刻み込む、60年代の“怒れる若者”の頃から脈々と続くイギリス製青春映画の伝統が、ここに甦った。
学校も家庭も退屈。はけ口はその外。夢中になれるものがそこにはあるが、行き止まりもある……そんな思春期の足取りをとらえた丁寧なつくりが魅力。語りつくされた物語ではあるが、それでも胸を締め付けるのは”クール”も”ダサい”も引き受けるリアリティゆえだ。
そして何といってもノーザンソウルという題材がまばゆい。『さらば青春の光』のモッズ、『THIS IS ENGLAND』のスキンヘッズのようなファッション性と熱気。そういう点でも英国青春劇の妙味を継いだ快作。愛おしい。
何かが始まる時の熱気に巻き込まれる
新しいムーヴメントが始まる時の勢い、その場から湧き上がる熱、いろんなものが連動して渦のようになったものが画面から伝わって来て、見ている方も巻き込まれてしまう。60年代の英国北部の労働者階級の若者たちから生まれたムーヴメント"ノーザン・ソウル"を描くが、現象だけでなく、そこにいた若者たちに焦点を当てる。英国音楽好き、英国男優好き、英国北方好きにはこの題材だけで垂涎ものだが、それを取っ払っても、友情あり、恋あり、大人への脱皮ありの少し切ない青春映画になっている。どの時代にも、対象が音楽でなくても、何かのムーヴメントの周囲にはこういう若者たちがいて、似たような出来事があったのに違いない。
この映画自体が「レアな一曲」のよう!
日本では自主上映のみだった2014年の英国映画――この劇場公開は「有り難い」の一言だ。実態はよく知らなかったノーザン・ソウル。モッズとネオ・モッズの間のエアポケット。舞台は1974年。ジョン・リードが書いたポール・ウェラーの伝記には、その頃からウェラーは60年代のレアなソウルレコードを掛けるクラブイベントに出かけ始めたとの記述がある。
物語は王道の『キッズ・リターン』等も連想する男子青春譚。出会いと別れ、変わらぬ友情。代償を伴う無軌道なパーティーライフ。そんな中、クールな一曲をめぐっての飢えが特別な情感で伝わる。投げ売りの格安盤の中から、高名DJのカバーアップ曲を偶然ディグったシーンの歓喜!