サムライマラソン (2018):映画短評
サムライマラソン (2018)ライター2人の平均評価: 3
お笑い系時代劇ではありませんよ
タイトルからてっきり『超高速!参勤交代』系のコメディと思い込んでいたら、いい意味で裏切られた。外敵の襲来に備えて心身を鍛えようと意気込む殿様主導の遠足に臨む人々それぞれの思惑を描く中盤までは人情喜劇的なトーンで進むが、後半はアクション満載な時代劇に突入。るろ剣で磨いた鮮やかな剣技を再び披露する佐藤健はじめ、役者陣は適材適所。武士が戦う場面のカメラワークが見慣れた時代劇と一味違い、役者の動きをしっかり見せるのが気に入った。また小松菜奈ちゃんが演じるお姫様が独立心旺盛だったり、切り株映画っぽい演出がある点も現代風で、これはグローバル展開を目指す製作者J・トーマスの好みだろう。
ある意味、今年最も不思議で謎めいた一作
タイトルからして「なんちゃって」か、痛快ノリを予感させるが、そのどっちも裏切られた別次元の感覚を味わった。侍が遠距離走で競い合う、そのものの物語だが、絵作りやシーンの切り替え、編集で、見慣れた時代劇とは圧倒的に異なるムードが演出される。イギリス人監督の感覚なのだろう。違和感なく心地よさを伴うから不思議だ。極めつけはフィリップ・グラスによるオーケストラ曲で、走る侍たちや、時に目を覆うような残虐描写と音楽のミスマッチが、これまた妙なゾワゾワ感をもたらす。「おしゃれな珍味」といった表現が似合うかも。人間関係や、各人物の意図がややわかりづらいものの、最後まで「次に何が起こる?」とテンションは持続する。