シンプル・フェイバー (2019):映画短評
シンプル・フェイバー (2019)ライター5人の平均評価: 3
マミー・ポルノならぬマミー・ミステリー!
お人好しなシングルマザーが失踪したママ友を心配して、探偵の真似事を始める設定はコージー・ミステリー。SNSで情報収集するのも今風。ただし想定外のヒネリと回想シーンの組み合わせやヒロインがぶち当たるアメリカ郊外の闇のせいで、昼メロ仕立てにした『ゴーン・ガール』といった趣。コメディが得意な監督なので、心理サスペンスでもお笑いっぽいのは仕方ないが、D・リンチ版があったら見たいかも。主演のアナ&ブレイクがそれぞれに二面性のある女性を楽しそうに演じているし、ブレイクが披露するモデルっぽいファッションもファンにはうれしいはず。気軽に見て、楽しめる作品だ。
あっちにもこっちにも意外性あり
スタイリッシュなサスペンスかと思わせて、おやこれはと予想外の方向に進み、最終的にはまったく別の地点に着地するところが、きっとこの監督の持ち味。何しろ監督は「デンジャラス・バディ」「ブライズメイズ 史上最悪のウェディングプラン」のポール・フェイグだ。
その荒技に、硬軟をこなすアナ・ケンドリックが馴染むのは当然として、これまで羽目を外さない印象のあったブレイク・ライブリーが応えて、新たな魅力を発揮。これは「デッドプール」でお約束を破りまくりの夫ライアン・レイノルズの影響?
ヒロイン2人が家で流す音楽が60年代フレンチポップ風なのも、オシャレなようであえてハズす本作の持ち味に似合ってる。
旬な女優2人を観る映画としては文句なし
「ブレイク・ライブリーが行方不明?」と聞いて、サメに喰われたか?不老不死か?と考えてしまうが、劇中セリフで登場する『悪魔のような女』要素はもちろん、『ゴーン・ガール』な展開もアリ。とはいえ、監督は『ブライズメイズ 史上最悪のウェディングプラン』を始め、ヒロインが魅力的なコメディが得意ながら、毎度120分近い尺という“切れない男”ポール・フェイグ。新境地といえるサスペンスの演出はイマイチながら、今回も118分。一方、ライブリー&アナ・ケンドリックの新たな魅力を引き出しまくり、旬な2人の女優を観る映画としては文句なし。ほかにも、オシャレなアバンタイトルなど、特筆すべき点は多い。
ママ友同士の友情と裏切りは軽妙洒脱でお洒落感満載
郊外の閑静な住宅街を舞台に、性格も環境もまるで正反対なママ友2人が子供を通じて仲良くなるわけだが、理想の素敵なお母さんを背伸びして演じているほのぼの専業主婦、華やかなファッション業界でバリバリ働くセレブな切れ者キャリアウーマン、それぞれの美しい仮面の裏に隠されたダークな秘密が垣間見えるようになり、やがてショッキングな事件が起きてしまう。終盤のどんでん返しはちょっとベタすぎる気がしないでもないが、首尾一貫して軽快なテンポで描かれる女同士の友情と裏切り、仁義なき戦いの物語はいろんな意味で痛快。ギャルやアルディなど懐メロ・フレンチポップスを散りばめたお洒落感も好き。
目と耳には心地いいのだが
「ブライズメイズ〜」「ゴーストバスターズ」のポール・フェイグは、ファニーで多才な女優たちに大活躍の場を与えてきた監督。今作でも、ブレイク・ライヴリーに普段のイメージとまるで逆の役に挑戦するチャンスを与え、一方でアナ・ケンドリックには、お得意のお茶目っぷりを発揮させている。しかし、コメディで知られるフェイグにとって初のスリラーは、ミステリーとえげつなさ、笑いのバランスが取れず、トーンがばらばら。次々来るサプライズの展開も、出てくるたびにどんどん信憑性がなくなり、むしろ逆効果。ただ、ファッションや家のインテリア、料理などビジュアルや、音楽のセンスは抜群で、目と耳には心地いい。