ふたりのJ・T・リロイ ベストセラー作家の裏の裏 (2018):映画短評
ふたりのJ・T・リロイ ベストセラー作家の裏の裏 (2018)ライター2人の平均評価: 3.5
複数のドラマを生むJ・T・リロイって、実はすごいのかも。
別人格を作り上げた作家L・アルバートの独壇場だった『作家、本当のJ.T.リロイ』に対し、本作は影武者にさせられたサバンナ・クヌープのPOVで物語が進む。見比べるのも一興だろう。世間の注目に戸惑うサバンナとセレブの仲間入りを喜ぶミーハーなローラとの温度差、徐々に起きる立場の逆転に思わず苦笑。自分を客観視できなかったのがふたりの共通点であり、弱点だったね。結局は創造した異色の経歴ゆえに詰んでしまった女性たちの失敗談であり、強い自意識に囚われる恐ろしさを教えられた。ローラ役のL・ダーンが本人に似せていて、素晴らしい。メディアの狂乱の一端を担ったコートニー・ラブが出演しているのは、一種の禊?
どこまでも人間的なスキャンダルの裏側
彗星のごとく現れた天才美少年作家J・T・リロイが、実は無名の女流作家が作り上げた架空の人物で、人前へ出るときは彼氏の妹に代役を務めさせていた。今から15年ほど前に全米を騒がせた事件の映画化である。精神的なトラウマに起因する自己評価の低さから匿名を選んだ大人の女性と、まだ自己を確立できず人生の道に迷う若い女の子が、J・T・リロイという虚像を共に作り上げ、やがて世間だけでなく自分たちもまた翻弄されていく。当事者の手記を基にした本作は、単なる売名行為と取られがちなスキャンダルを、自らのアイデンティティを模索する女性たちの物語として描いている点が面白い。クリステン・スチュワートの美少年ぶりも必見!