もみの家 (2020):映画短評
もみの家 (2020)ご当地映画の壁を軽く越える演出と芝居
心に問題を抱えた若者が集う施設という「ザ・ノンフィクション」あたりでも描かれている世界だが、完全な悪人は登場しないし、これといった事件も起きない。だからこそ、日常を当たり前に過ごしていくようになる、不登校だったヒロインの心の機微が重要になる。そして、『若おかみは小学生!』同様、地元の伝統芸能に触れることで、表情を取り戻していく展開に心動かされる。そんな坂本欣弘監督の演出は、前作『真白の恋』のときのような、あざとさを感じさせず、やっぱり陰キャが巧い南沙良の芝居とともに、ご当地映画や文部省科学省選定作といった壁を軽く超えていく。ヒロインがラストに取る意外な選択も、どこかリアルだ。
この短評にはネタバレを含んでいます