レディ・マクベス (2016):映画短評
レディ・マクベス (2016)ライター2人の平均評価: 4.5
フローレンス・ピューの「支配されない」意志の顔
F・ピュー初主演の2016年作品だが、今から逆算するとまさに『ミッドサマー』&『ストーリー・オブ・マイ・ライフ』の濃い原液のよう。前者は受難の状態から、あるコミュニティの中で悪夢的覚醒を果たす展開が共通し、ホラーのサブジャンル的な作り方も似ている。
原作はオペラも有名なレスコフの小説『ムツェンスク郡のマクベス夫人』(1864年)だが、オルコットの『若草物語』は1868年なので時代背景が同じ。19世紀的な男性社会の抑圧の中で女性の生き方を描きつつ、後半の脚色・変換にはっきり現代性が加味された。冒頭から戦闘態勢の顔をしたピューの個性。当時20歳の彼女は既にニュー・フェミニズムを体現している。
終始、危険がいっぱいで目が離せない
情熱、欲情、復讐と裏切りにまみれた、ドロドロのストーリー。フェミニズム物でありつつ、ダークで残酷、終始危険がいっぱいで、心を掴まれる。望まぬ結婚をさせられ、裕福ながら不幸な生活を強いられる主人公キャサリンは、夫の不在中に不倫関係をもち、性的にも、精神的にも解放されていく。そこから彼女はどんどん歯止めが効かなくなり….。「ミッドサマー」「ストーリー・オブ・マイ・ライフ〜」の3年前に公開された今作で、まだ20歳だったフローレンス・ピューは、無力でかわいそうな若い女性が、良くも悪くもエンパワメントされていく過程を見事に表現。彼女はやはり今の若手の代表だと確信させられる。