茲山魚譜-チャサンオボ- (2021):映画短評
茲山魚譜-チャサンオボ- (2021)身分の違いを超えた師弟愛が浮き彫りにする社会改革の難しさ
キリスト教徒ゆえに迫害された朝鮮の学者チョン・ヤクチョンが、流刑の島で漁民たちの素朴な暮らしに触れ、やがて庶民のための海洋生物学書を著したという実話を描く歴史ドラマ。ここでは、そのヤクチョンと若き漁師チャンデの師弟関係が軸となる。エリートの理想主義者である師匠は弟子を通して庶民の知恵を学び、勉学意欲の旺盛な弟子は師匠から学問だけでなく人の道を学ぶ。だが、そんな2人でも相容れない点がある。王制を廃した平等社会と西欧的な近代化を目指すヤクチョンに強く反発するチャンデ。恵まれし者はそれゆえ高い理想を抱くが、虐げられし者は叩き込まれた賤民意識からなかなか逃れられない。そこに社会改革の難しさがある。
この短評にはネタバレを含んでいます