tick, tick...BOOM!:チック、チック…ブーン! (2021):映画短評
tick, tick...BOOM!:チック、チック…ブーン! (2021)ライター2人の平均評価: 4.5
ガーフィールドの魅力全開。オスカー候補に値する
戦争映画「ハクソー・リッジ」でオスカー候補入りしたアンドリュー・ガーフィールドが、まるで違う顔を見せる。そもそもこんなに歌がうまいとは知らなかったし、歌の中でも実に豊かな感情表現をしてみせるのだ。チャーミングで、ファニーで、エネルギッシュな彼には引き込まれっぱなし。これまたオスカー候補に値する。故ジョナサン・ラーソンが書いた歌は、メロディが美しいのはもちろん、夢を追いかける中でのフラストレーションや悩み、年齢のプレッシャー、自分が抱く数々の疑問などを正直に語る歌詞が最高にパワフル。リン=マヌエル・ミランダのラーソンへの敬意がたっぷり伝わってくる。
ミュージカル映画として近年、最高のサンプル
ミュージカル、特に『レント』を好きな人は動揺するほど感動にむせび泣く仕上がり。J・ラーソンの自伝的ドラマは、創作する作品と日常の美しき多層構造で、楽曲の必然性に説得力を与える。つまりミュージカルとして最適な設定。そこに耳に残るキャッチーなメロディが続出する。
リン・マニュエル・ミランダは初監督ながら、場面の切り替え、テンポの良い編集で、このジャンルを知り尽くした「センス」を実証。A・ガーフィールドのやや過剰さも作品世界にハマる。
レジェンドたちの登場、名作『レント』への布石、30年前なのに現在と重なる悲劇、そして夢を求める人生という普遍的テーマ、すべてが物語に溶け込む。できれば最高の音響で!