#マンホール (2023):映画短評
#マンホール (2023)ライター3人の平均評価: 4
ソリッドシチュエーションスリラーとして秀逸
逆玉結婚で前途洋々なエリート会社員が同僚との飲み会に参加したところ、気が付くとマンホールの底に!あれ?酔っぱらって転げ落ちたのかな?ということで、スマホで知り合いや警察に連絡かけまくり、SNSでフォロワーに助けを求めるものの、なぜか誰一人として見つけてくれない。それどころか、次々と絶体絶命のピンチに見舞われ、やがて全く予想しなかった事の真相が明らかとなる。その過程で露呈するのが主人公のクズっぷり。これ、もしかして単なる事故じゃなく、誰かに恨まれてハメられたのでは?とまでは想像つくのだが、しかしこの結末は全くの想定外。こりゃ一本取られた。ソリッドシチュエーションスリラーとしてなかなか秀逸!
“こわれゆく” 中島裕翔
スマホ1つで立ち向かう、ほぼワンシチュエーションの脱出劇。「親愛なる僕へ殺意をこめて」の岡田道尚によるオリジナル脚本だけに、いろんな意味で容赦なく、近年影を潜めていた熊切和嘉監督作らしい人間の闇や醜さ、狂気がジワる。それに伴い、クールなイメージが強い中島裕翔がブッ壊れていくのが見どころだ。タイムリミット迫るスリリングな展開ともに、ポスタービジュアルの「#」が「女」に見えることや、まさかの超展開など、さまざまな仕掛けも用意。半ば強引なところや昨年公開の某作とのカブりもあるが、それも気にならない99分のプログラムピクチャーとしての醍醐味を感じられるところに、★おまけ。
ハードな面白さとツッコミどころの鬩ぎ合いが、意外に快感!?
穴に落っこち、そこからどう脱出できるかという一夜のサバイバルドラマは、リアリティ重視で観ると「そこまでは…」と急に冷静になったりするも、ツッコミどころが発生しかけると、一応の回答を力技で用意。ワンシチュエーションで次から次へと危険な試練&助かりそうな予感の応酬で、そのアイデアの豊富さにいちいち感心してしまう。飽きさせないサービス精神は確か。SNSを駆使した救出要請の異様なテンポ感は映画的。
人々の腹黒さで物語がダークになりかけるも、ほぼ一人芝居、中島裕翔の誠実なアプローチで中和される。
熊切監督は初期の『鬼畜大宴会』が脳裏をよぎる、おぞましい描写もぶっこんでくるので、閲覧注意な瞬間アリ。