エンドロールのつづき (2021):映画短評
エンドロールのつづき (2021)ライター2人の平均評価: 3.5
持たざる者が夢を見ることの難しさと大切さ
地元に学校すら存在しないインドの田舎に暮らす貧しい少年が、生まれて初めて見た映画の魅力に取りつかれ、親の反対にも耳をかさず映写技師の好意で映画館へ通いつめ、やがて仲間と共に「映画の仕組み」を解き明かそうとする。監督自身の少年時代をモデルにしたという作品。さながらインド版『ニューシネマ・パラダイス』もしくはインド版『フェイブルマンズ』といった感じだが、日常生活に根強く残るカースト制度の価値観や圧倒的な地域格差などインドならではの社会事情も織り交ぜられ、映画文化の素晴らしさは勿論のこと、何も持たない貧困層にとって夢を見ることの難しさと大切さを痛感させられる。
古典的インド映画の色と輝きに満ちている
昨今増加中の"監督による映画論"映画だが、インド生まれの監督による本作は、古典的インド映画が放つ極彩色の輝きに満ちている。全編の濃い色彩は、主人公の幼い少年が初めて映画で見たものが、この世のものならぬ華麗な光景で、彼が味わったのが極彩色の恍惚だったことに呼応している。この鮮やかな色が、映画終盤、映写技術の進化のために廃棄されたフィルムが加工されて変貌する意外な物にも継承され、少年がそれを見て感じるものへと繋がっていく。
映画を初めて見た少年が、自分が味わっているものを捕まえようと、映写機が発する光の方に手を伸ばす。この無意識の行動が、映画の魅力のある一面を象徴して印象に残る。