イーサン・ホークが語るドローンによる戦争を描いた話題の新作とは?【トライベッカ映画祭】
トライベッカ映画祭(Tribeca Film Festival 2015)で上映された映画『グッド・キル(原題) / Good Kill』について、イーサン・ホーク、ゾーイ・クラヴィッツ、ジャニュアリー・ジョーンズが語った。
イーサン・ホークが時空警察のエージェントを演じたSFサスペンス!『プリデスティネーション』
本作は、軍事用ドローン(無人攻撃機)の操縦士の苦悩を描いたドラマ。かつて戦闘機パイロットだったトム(イーサン・ホーク)は、今はネバタ州の基地でドローンを操縦してタリバンを攻撃する任務に就いているが、上層部の命令により、テロ容疑者だけでなく、その家族までも無差別に巻き込むことに、次第に苦悩を感じ始めていく。ゾーイはトムの同僚パイロットのヴェラ役、ジャニュアリーはトムの妻モリー役に挑戦した。監督は、映画『ガタカ』のアンドリュー・ニコル。
イーサンが本作に興味を持ったのは「ドローンに関しては新聞などで読んでいたが、専門的なことは理解していなかった。ただ、これまで戦争を扱った映画の中で、ドローンの操縦士役を見たことがなかったことや、今まさに僕らの世界で起きている独特の戦争形態であることから、すぐに演じてみたいと思った」とこの特別な役に彼の食指が動いたことを語った。
トムを支える妻モリーについてジャニュアリーは「個人的にドローンのプログラムに関してそれほど知識がなかったけれど、実際にわたしが演じたモリーも、自分の夫の任務についてあまりよく理解していない設定なの。トムはドローンの任務によってPTSD(心的外傷後ストレス障害)のような症状に陥り、そのため妻との関係も良好ではなくて、後に胸の張り裂けるような夫婦関係になっていくの」と複雑な夫婦関係であることを明かした。
この映画の魅力についてゾーイは「アンドリューは『ガタカ』のようなSF作品にたけていて、脚本もまるで(ドローンなどが)SF作品のように記されているけれど、実際の映画は全く違ったドラマ構成であることが魅力なの。さらにアンドリューは、米軍の観点だけを観客の脳裏に植え付けるのではなく、タリバンの観点からも伝えていて、観客は強制的に両サイドの観点を見ることになり、(現在起きている)真の戦争の恐怖を感じることになると思う」と語った。
映画は、ドローンによる攻撃で、同時多発テロのような被害を未然に防ごうとするアメリカと、無差別に殺され恨みを持つタリバンの家族との終わりのない戦争を痛感させられる作品。(取材・文・細木信宏/Nobuhiro Hosoki)