第13回 話題沸騰中!! ハリウッド3D映画事情の表と裏……
LA発! ハリウッド・コンフィデンシャル
LA発!ハリウッドコンフィデンシャル
話題沸騰中!! ハリウッド3D映画事情の表と裏……
アメリカは233回目の誕生日(独立記念日)を終えて、いよいよ夏真っ盛り! そんな夏気分と同じくらいハリウッドで盛り上がっているものがあります。それは……3D映画! 日本でも現在3Dアニメ映画『モンスターVSエイリアン』が大ヒット公開中ですが、とにかく今は3Dが熱いっ!! というわけで、今回のハリコンでは、今ハリウッドで一番ホットな話題である3D映画の表裏に迫ってみます!
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皆さんは3Dが何の略かご存知ですか? 3 dimensional(立体映像)、元来の2D(平面映像)に対して、いわば飛び出す映画のことを3Dと呼んでいるのです。
さて、この3Dの技術ですが、実は新しいものではなく、古くはステレオグラフという3Dの元になる写真などから始まり、3D映画としては1953年の『肉の蝋人形』に代表されるように、1950年代から存在していたのです。そして、以来3Dの映像技術が少し向上するたびに映画市場に現れては再び消えてゆく……という状態を数年おきに繰り返してきました。口の悪い評論家たちは3Dのことを、「たまにやって来てお客を楽しませた後はフラリと消えていくサーカスみたいなものだ」などと言っていました。
しかし最新の3Dに関しては、「今までのものとはワケが違う!」と豪語しているハリウッドの大物たちがたくさんいます。では、現在の3Dブームが一時的なものではないとどうして言い切れるのでしょうか?
ご存知のように、以前の3D映画には、赤と青のセロハンが左右それぞれに張られたボール紙などでできた3Dメガネが必需品でした。これをかけて映画を観ることで、画像が立体化して見えたわけですが、その画像たるや色あせていて醜いばかりか、かけていた赤青メガネのせいで映画中に頭が痛くなったり、気持ち悪くなったりする観客が続出していました。
当時の3D映画は、65ミリフィルム仕様で(一般の映画は35ミリフィルムが定番)、重さが70キロ近くある大きくて重たい2台の映画カメラを同時に回して撮影するという手法で作られていました。おまけにフィルムを使用しているので、現像するまではその出来というものが確実にわからないという何とも不確かで非合理的なものでした。
しかし近年のデジタル化やHDなどの映像技術の進歩によって、3D映画製作にも大きな変化が現れ始めたのです。
『モンスターVSエイリアン』の製作スタジオであるドリームワークス・アニメーションの社長ジェフリー・カッツェンバーグ氏は、この映画に3Dの将来を託していました。ここ数年を費やし、すでにドリームワークス・アニメーションを3Dアニメーション・スタジオの先駆けとして育成してきたジェフリー氏は、最新3D技術は過去の3Dとは雲泥の差で、映画業界を一新するパワーを備えていると確信したのです。
ジェフリー氏が絶大な信頼を置く、最新3Dの映画制作には目を見張るような技術が使用されています。昔のような2台のカメラを使用してのおぼつかない撮影方法は見る影もなく、プレビジュアリゼーション(pre-visualization)という技術を使用し、撮影する前にコンピューター上で背景、前景、中景にどのように照明を当て焦点を合わせるかというシミュレーションができるようになっているのです。これならもう昔のように現像してみないと実際の出来がわからない……なんていう非合理的なことがなくなるばかりか、画像的にも非常に優れたものが出来るというわけです。『モンスターVSエイリアン』をご覧になった方は、その3Dアニメの精巧さに驚いたに違いありません。
ジェフリー氏が『モンスターVSエイリアン』という持ち駒で勝負に出た大ギャンブルは、アメリカでの公開週末を初登場第1位という形で効を奏したばかりか、3Dのこれからに影響を与える大きなターニングポイントにもなったのです。
3Dをハリウッド映画の未来と信じているハリウッドの大物はドリームワークス・アニメーションのジェフリー氏だけではありません。ディズニーとピクサーは今年度、現在アメリカで大ヒット中の映画『カールじいさんの空飛ぶ家』を含めた多数の3D映画の封切りを予定しており、スティーヴン・スピルバーグ監督は新作映画『タンタンの冒険旅行』を3Dで撮影中。映画『ロード・オブ・ザ・リング』のピーター・ジャクソン監督も来年に3D作品の撮影を予定、そして極めつけはジョージ・ルーカス監督が映画『スター・ウォーズ』シリーズを3Dで公開したいと話しているのだとか。
ちなみにジェフリー氏と肩を並べるくらい……、いやそれ以上に3D市場に欠かせない大物が、映画『タイタニック』のジェームズ・キャメロン監督。彼が長年かけてパートナーのビンス・ペイス氏らと開発したフュージョン・3Dカメラ・システムというカメラは、昔の高価で重たい3Dカメラに比べて、たったの6キロという軽さで値段もずっと低価格。にもかかわらず、その映像クオリティーは目を見張るものがあり、映画界の3Dに対する元来のスタンスを一掃した新しい3D時代を切り開くシステムだ、と業界内で絶賛されているのです。
そんなジェームズ監督が誇るフュージョン・システムを使用した超話題3D映画『James Cameron’s アバター』が、12月にはアメリカで公開される予定。伝説の惑星パンドラを舞台にしたこの大作は、公開半年以上前からすでに大変な話題となっています。そして、この映画を境に3Dを中心とした新たなハリウッド映画の時代がやってくるとうわさされているのです。さらに、『James Cameron’s アバター』に続いて、3D版映画『タイタニック』の公開も予定されており、2Dでもすごかったあの名作が3Dで観られるなんて……と想像しただけでもゾクゾクしてきます!
赤青メガネはなくなったもののいまだに掛け心地の良くない特殊メガネが必要だという点や、映画館をデジタル映写に変える必要があるという金銭的な問題など、課題はまだまだあるものの、やはり最新3D技術のスゴさは前代未聞! ハリウッド映画史のターニングポイントにもなると言っても過言ではないと思います。
というわけで、最新の3Dはどうやらかなりスゴイ!! ということが何となくでもおわかり頂けましたでしょうか!? 百聞は一見にしかず! うわさの3D体験を皆さんもぜひ味わってみてくださいね!
(取材・文 神津明美 / Addie・Akemi・Kohzu)
高校留学以来ロサンゼルスに在住し、CMやハリウッド映画の製作助手を経て現在に至る。アカデミー賞のレポートや全米ボックスオフィス考など、Yahoo! Japan、シネマトゥデイなどの媒体で執筆中。全米映画協会(MPAA)公認のフォト・ジャーナリスト。
生まれて初めてギックリ腰なるものになり、「この世にこんな痛みがあるのか……!」と絶句した数日でした……。