日本篇 第26回東京国際映画祭に潜入!
今年の10月17日から25日の9日間にわたり、国内外の映画ファンから熱い支持を得ている第26回東京国際映画祭が開催されました。本映画祭で、俳優の斎藤工氏と共に映画祭のナビゲーターを務めた、第7回「東宝シンデレラ」で審査員特別賞を受賞した山崎紘菜さんがレポートします!(レポート、写真:山崎紘菜、編集・文:森田真帆)
創立から28年! 映画の祭典
東京国際映画祭は、毎年10月に東京で開催されている国際映画祭。1985年に東京の渋谷でスタートして以来、28年のご長寿映画祭! 5名の国際審査委員によって最優秀作品賞である「東京 サクラ グランプリ」を選出する「コンペティション」部門、アジア(日本、中東地域を含む)で作られた新鋭監督の1本目または2本目の長編作品を対象にした「アジアの未来」部門、さまざまな日本のインディペンデント映画をクローズアップする「日本映画スプラッシュ」部門など数多くの企画が行われ、毎年国内外から数多くのセレブリティーが訪れます。今年は、思春期を迎えた中学生の複雑な胸の内をパンクバンドを通して描いた映画『ウィー・アー・ザ・ベスト!』が「東京 サクラ グランプリ」に選出されました。
「コンペティション部門15作品を全て観ることができて、とても幸せでした。これまで観たことがないような作品ばかりで、改めて映画って面白い! と感じることができました。わたしの中でのグランプリは『ザ・ダブル/分身』! 『ソーシャル・ネットワーク』のジェシー・アイゼンバーグさんの演技がすごくて、思わず時間を忘れて観てしまいました。日本でも公開されるはずなので、チャンスがあったらぜひ皆さんに観ていただきたいです」(山崎さん)
グリーンカーペットはペットボトルで出来ている!
カンヌ国際映画祭、ベルリン国際映画祭、べネチア国際映画祭の三大映画祭に次ぐ本映画祭の目玉の一つが、オープニングセレモニーに監督・俳優たちがドレスアップして歩く「グリーンカーペット」。地球環境保全活動を推進している東京国際映画祭は、ペットボトルをリサイクルした素材で製作したグリーンカーペットでエコをアピール。今年からは、作品の上映前にこのグリーンカーペットイベントが連日行われるという映画ファンにとってはうれしいことに! 有名人たちの登場に、六本木ヒルズは毎日大いに盛り上がっていました。
「わたしも映画祭のナビゲーターとして、初めてグリーンカーペットを歩かせていただいたのですが、ファンの方々とお話することができたりして、とても楽しかったです。今年はトム・ハンクスさんやソフィア・コッポラ監督など、たくさんの有名な方々と同じ空間にいられたことが夢のようでした!」(山崎さん)
映画を観る人の引き出しが増えるような作品選定
コンペティション部門の15作品を選定する、プログラミング・ディレクターの矢田部吉彦さんに、山崎さんが突撃インタビュー。最終的に15本まで絞る上で、矢田部さんはいろいろなタイプの作品を選ぶようにしているとのこと。山崎さんが、「今回、自分の今まで観てきた映画が、『映画』と呼ばれるもののほんの一部だったことを知りました。いろいろな作品があって、自分の中にどんどん引き出しが増えていく感じがしました」と全15作品を鑑賞した感想を伝えると、矢田部さんは「それこそが僕らがこの映画祭を行っていることの目標です!」とニッコリ。「公開される予定のない作品をはじめ、観ることがなかなかできないような個性的な作品を中心に選定しています」と作品選びへの思いを語っていただきました。
さらに、現在19歳の山崎さんと同世代の若い人たちへの映画祭の楽しみ方を矢田部さんに伺ったところ、「ただ楽しいとか面白いという作品だけじゃなくて、個性的な映画もたくさん観て、いろんな刺激を受けてもらいたいと思っているんです」という言葉に映画祭のさらなる意義を感じました。
パーティー会場に挑戦!
アウトドア空間で映画を観ながら、イベントやライブ、食事を楽しめる移動式映画館「CINEMA CARAVAN」は、逗子海岸映画祭、ゆうばり国際ファンタスティック映画祭、サンセバスチャン国際映画祭などで好評を得てきた人気企画。東京国際映画祭に登場した「CINEMA CARAVAN」のテーマは「都会ならではの光と陰 近代社会の過去とのずれ」。開催中は『南極料理人』や『フラッシュバックメモリーズ 3D』など個性豊かな映画が上映されました。
アウトドア用品を扱っているコールマンが協賛していたため、イベントの開催地でもある六本木ヒルズの毛利庭園に造られたパーティー会場はとにかくおしゃれ! 「こういうパーティーに参加させていただいたのは初めてだったんですが、海外の監督もたくさんいらしていたので、頑張って英語でごあいさつをしたり、ドキドキするような時間を過ごすことができました。映画祭でないと絶対にお会いできない方々ばかりだったのですごく貴重な体験でしたし、映画を通して人が、また世界が繋がっていることを実感して感動しました」(山崎さん)
さすが六本木ヒルズ! おしゃれ系レストランも充実!
2003年までは渋谷のみで開催され、2004年から2008年までは渋谷のBunkamuraと六本木ヒルズで開催されていた本映画祭は、2009年から六本木のみの開催へと変更に。メイン会場となるTOHOシネマズ六本木ヒルズのある六本木ヒルズは、カップルのデートスポットにぴったりなオシャレ系レストランがいっぱいです。
「中でもTOHOシネマズ六本木ヒルズのすぐ近くにある期間限定のカフェの『TIFF ムービーカフェ』は、わたしのお気に入り! ランチメニューには、日替わりのパスタからビーフステーキなどいろいろな種類があるんです」(山崎さん)
「サラダランチは、サラダにパン、スープというヘルシーメニューでダイエット中の女子にもぴったりですよね!? ちなみにこちらのレストランは、デザートも充実していて、わたしも食後に頼んじゃいました~! この日は大型スクリーンで、グリーンカーペットの様子を上映中。ランチを食べていたら、わたしの顔が突然出てきて驚いちゃいました!」(山崎さん)
ボランティアが支える東京国際映画祭
東京国際映画祭の会場内を歩いていると、至るところにおそろいのパーカーを着たボランティアスタッフたちの姿があります。その数は、総勢およそ200名! 劇場のスナックコーナーに立っていた学生ボランティアは、映画祭オリジナルのポップコーンを「真っ赤なハバネロ味と塩抹茶味がありますよ!」と笑顔でアピール! ボランティアのほとんどは映画が大好きという若者たちで、元気いっぱいに観客を迎える彼らのエネルギーは、映画祭全体の雰囲気を大いに盛り上げていました。
「学生ボランティアの皆さんの控室にお邪魔しました! 連日のお仕事で、疲れているはずなのにすごく温かく迎えていただいてとてもうれしかったです。皆さんがおそろいで着ている映画祭オリジナルのパーカーがすごくかわいくて、記念撮影のときに貸していただきました!」(山崎さん)
総合テーマは「反抗」だった、今年のコンペティション部門作品群。どの映画も、監督の個性が存分に発揮された映画ばかりが並んだといえるだろう。「東京 サクラ グランプリ」を受賞したのは、80年代初頭を舞台に、パンクバンドを始めた女子中学生たちの姿をみずみずしく描いたスウェーデン映画『ウィー・アー・ザ・ベスト!』。審査員特別賞には、現代イランの若者が抱える問題を劇団員たちを通して描いた『ルールを曲げろ』、最優秀監督賞には斬新な映像センスで、馬と人間のドラマを描いた『馬々と人間たち』のベネディクト・エルリングソンが選ばれた。受賞した作品はどれも、監督の作家性が強く、個性的で魅力的なものばかり。そして会場には、そんな個性的な「映画」を心から楽しむ観客の姿が数多く観られた。テレビドラマから派生するメガバジェット映画が、数多く興行収入ランキングに並ぶ日本映画界にも、作家性の強い監督が自由に映画を撮れる環境ができることを願いたい!