『デスノート LNW』東出昌大&池松壮亮&菅田将暉 単独インタビュー
オチは2パターンあった!
取材・文:浅見祥子 写真:高野広美
映画『DEATH NOTE デスノート』の10年後を描く『デスノート Light up the NEW world』は、原作者の大場つぐみの協力によるオリジナルストーリー。この映画でデスノート対策本部の三島に東出昌大、Lの後継者である竜崎に池松壮亮、そしてキラ信奉者のサイバーテロリスト・紫苑に菅田将暉という、そそるメンツが顔を揃えた。彼らは何かと話題を呼ぶこの映画に、いかに取り組んだのだろうか。
キャスト発表で周囲がザワつく話題作
Q:この映画への出演が発表され、周囲の反響はいかがでしたか?
東出昌大(以下、東出):今の時代、作り手はどうしてもネットの声を聞きたがりますよね。でもそこはもう腹をくくってやるしかない。逆に気にせず、ぶちかましてやろう! という思いが強かったです。
池松壮亮(以下、池松):そうですね……いろいろ言われるのは、それだけ力のある作品だということですから。誰がやろうとウワサは立つだろうし、それはもう覚悟の上で。ウワサする人たちにもちゃんと納得してもらえるものをつくらなきゃいけないなと思いました。それとこれまでで一番、やるんだ! と驚かれましたね、意外だったみたいで。
菅田将暉(以下、菅田):僕には弟が二人いるのですが、一番下の高校生の弟が「兄ちゃん、『デスノート』やるの!?」って。そう言ってきたのは初めてでした。
池松:うれしいね、それ。
菅田:うれしかったです(笑)。僕自身はネットで、どんなふうに発表されたのだろう? とキャスト発表時のニュースをチェックしたくらいでしたけど。
三者三様に個性的な役柄と格闘
Q:それぞれが演じたキャラクターについて。まず東出さんは微妙なバランスや奥行きが求められる役ですよね?
東出:そうですね。実はこの映画、撮影時にはオチが2パターンあり、それぞれを撮影していました。台本も撮影現場で流動的に変わっていったので、その都度、監督やプロデューサーと相談しながらつくった感じです。三島は池松君の演じた竜崎と菅田君の演じた紫苑という天才奇才に囲まれ、そこと対立する役でもあって。強い意志を持って挑まないとつぶされる、という思いで演じていました。俳優としての二人の印象は秀才と秀才、努力の人だなという印象でしたね。
Q:周囲に驚かれたとのことですが、確かに池松さんにとっては珍しい役柄ですよね?
池松:邦画の世界では昨今、漫画を映画化するってことに慣れているような気がします。(本作はオリジナルストーリーのため)僕自身はこんなに台本に何らかの要素をプラスしてキャラクターをつくり上げようと頭を使ったのは初めてと言いますか、そうしたことをまったく考えずに俳優人生をやってきたので、初めてのことに挑戦した気分で面白い経験でした。ふだんはやらないアプローチが必要だったんです。やはり前作はキラこと夜神月とLという二人のキャラクターの強さが際立っていましたよね。それぞれに似た部分と違う部分がキチンと計算されていて、それぞれのキャラクターになっている。前作を見直して、あらためてそう感じました。
Q:紫苑という役柄は、台本からイメージしやすかったですか?
菅田:僕が演じた紫苑は、台本上だと演じ方が無限にあるようでした。
池松:わりと三人ともフラットに書かれていたもんね。
菅田:そうですね。何が起きて、どんなやりとりがあるのか? オリジナルストーリーなので、要は台本に書かれた事件や会話が成立すればいいんです。でも、これがかなり頭を抱えました。一言で「サイバーテロリストです」と言われても、「そっか、あのサイバーテロリストね!」とはならないですよね(笑)。紫苑がサイバーテロリストだということは、世の中にダメージを与えているシーンがたくさんあるのでわかるとは思うんですけど。でもそうした表面的なもの以上に、演じる上で大事なものがたくさんありました。たぶんそれは、そこに名前を書くと死ぬというデスノートという存在によって生じた大きな事件、彼がその被害者なのか加害者なのかわからないですけども、そのあたりに由来する悲しみみたいなものなのかなと。
日本映画ってこんなところまでできるんだ!
Q:完成した映画を観た感想は?
東出:正直言うと、僕ら俳優は台本を読んで演じている分、どこで何が起きるかを知っています。だから、それを知らずにこの映画を観られる皆さんをうらやましいなと思いました。とはいえ、全ての映像がつながったものを観ると、こうなったのか! という驚きも大きかったです。ここまで重量感が増し、映像美を誇る映画が日本でもつくれるんだなと。そう思える珠玉のカットがたくさんあってうれしかったです。『デスノート』って会話劇だったり推理の勝負だったりしますよね。でも一言一句理解しないとわからないってことじゃなく、物語の骨組みがしっかりしているので、ちょっと飛ばしても大丈夫なんです。登場人物の関係性が逆転に次ぐ逆転だったりもするけど、『デスノート』をあまりご存じない方でも楽しんでいただけると思います。
池松:ものすごいパワーがあるし、今かなり自信を持っています。スゴイ映画ができたんじゃないか? という手応えがありますね。もちろん映画が出来上がるまでそんな確信めいたものは持てませんでしたし、そりゃやっぱりこういう時代ですから、ネットでのリアクションもあって。だからこそ怖い部分と逆にワクワクする部分がありました。でもそんなことを言っていたら映画なんてつくれないですから。完成したものが映画として素晴らしかったので、あとはもう観ていただくしかない。自信を持って宣伝しようと思っています。
菅田:明らかにパワーアップしたところがたくさんあるなと。映像の美しさ、死神のCGのクオリティー、死神と人間が画面の中で共存している感じ。海外ロケもあったりして、日本の映画ってこんなところまでできるんだ! って思いました。そのスケール感には単純にワクワクしました。僕らが洋画を観たときは、セリフの全てを理解できなくても映像の力で、わ~! と圧倒されて観ちゃうところってあると思うんです。それに似た感覚がありました。そして、デスノートを中心にした人間の野心や憎しみ、熱いものがちゃんと描かれていて、素晴らしいエンターテインメントだなと思いました。
観る者の人間性が試される映画!?
Q:この映画は最後の最後まで謎めいたメッセージがありますよね?
東出:そのメッセージについてもそうですが、劇中の三島の表情は観る方によって解釈がそれぞれ変わると思うんです。映画を観たあとに「あの表情はどっちの意味だろう?」と考えさせられ、帰り道に誰かと話したくなるんじゃないかと。捉え方によってその人が性善説と性悪説のどちらを信じるか? 人間性を試されるようで。それってデスノートの面白さそのもので、それぞれが推理を楽しめるようなつくりになっています。僕自身も試写の帰りにマネージャーさんと「あのカットはあのシーンのあそこにかかっていて……」みたいな話をずっとしていました。もちろん台本を何度も読んでいるのですが、映像になるとまた解釈が変わるんですよね。そもそも、あの最後のメッセージも台本にはなかったんですよ。
池松:確かにプロデューサーが「この映画で人間性が問われる」と言っていました。ちなみに僕はあのメッセージを観て、マジか! と思ったので、いい人間じゃないかと。
東出:よかった~と思ったってこと? それとも、うわコイツまだ!? みたいな?
池松:「よかった~」の方(笑)。
菅田:僕は……ちゃんと覚えてないんですよね。
池松:寝てた?
菅田:いや寝てないですけど(笑)。1回目の試写って、自分の演技が気になって何も入ってこないんですよ。
Q:では、もし続編があったらどうします?
東出:いやあ、全然考えていないですね。でももし前作の『DEATH NOTE デスノート』、藤原竜也さんと松山ケンイチさんのその後が描かれるならあの二人でやっていただきたいし、もし今回の『デスノート Light up the NEW world』の続編があるならこの三人……。
菅田:いやそれ、三人とも生き残ってないとできないから! すかさずフォローに入ったよ。
東出:ありがとう(笑)。
菅田:でも少なからず、作品に出演するかどうかは縁なので。そのときにやるべき作品なんだなと思ったらやる……ってことかもしれませんね。
映画のポスターと同じように東出が真ん中にいて、池松と菅田が脇を固める。東出は慎重に言葉を選びながら丁寧に礼儀正しく語り、池松は終始低いトーンで、でもときおりボソッと面白いことを言い、菅田は恐るべき頭の回転の速さでトンチの効いたやりとりをかます。三人の間には、完璧に阿吽の呼吸が出来上がっているようだ。それはこれだけの大作をつくり上げたからこその絆のようにも見える。やはりこの三人で続編……ってアリなのか!?
(C) 大場つぐみ・小畑健/集英社 (C) 2016「DEATH NOTE」FILM PARTNERS
映画『デスノート Light up the NEW world』は10月29日より全国公開